シアン化金(読み)しあんかきん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シアン化金」の意味・わかりやすい解説

シアン化金
しあんかきん
gold cyanide

金のシアン化物。1価および3価の塩が知られている。

(1)シアン化金(Ⅰ) ジシアノ金(Ⅰ)酸塩M[Au(CN)2]水溶液に塩酸を加え、温めると沈殿する。淡黄色板状晶。空気中で安定。湿った状態で光にさらすと分解する。強熱すると金とシアンに分解する。水、エタノールエチルアルコール)、エーテルに不溶。アンモニア、シアン化アルカリ、チオ硫酸ナトリウム硫化アンモニウムなどの水溶液には可溶である。常温では希酸や硫化水素で分解されない。

(2)シアン化金(Ⅲ) 化学式AuCN3、式量275.1。テトラシアノ金(Ⅲ)酸塩M[Au(CN)4]水溶液に強酸を加え、濃硫酸上で濃縮すると三水和物Au(CN)3・3H2O(式量329.1)が得られる。三水和物は無色板状晶。潮解性。50℃で分解する。水に易溶、エタノールに微溶。猛毒。遮光、密栓して貯蔵する。

[中原勝儼]

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化学辞典 第2版 「シアン化金」の解説

シアン化金
シアンカキン
gold cyanide

】シアン化金(Ⅰ)(gold(Ⅰ) cyanide):AuCN(222.98).ジシアノ金(Ⅰ)酸カリウムK[Au(CN)2]とHClとの水溶液を50 ℃ に加熱すると得られる.淡黄色の結晶.鎖状構造(…Au-CN-Au…).密度7.14 g cm-3.水に不溶.乾燥空気中では安定だが,湿った空気中,光照射,加熱などで分解して,Auとジシアン (CN)2 になる.NH3,KOH,KCNなどの水溶液に可溶.[CAS 506-65-0]【】シアン化金(Ⅲ)(gold(Ⅲ) cyanide):Au(CN)3(275.02).テトラシアノ金(Ⅲ)酸カリウムK[Au(CN)4]水溶液にヘキサフルオロケイ酸H2SiF6を作用させると三水和物Au(CN)3・3H2O(329.07)が得られる.これを加熱すると50 ℃ で分解する.無水物は得られない.無色の板状結晶.潮解性がある.水に易溶.過剰のHCNで,H[Au(CN)4]・nH2Oの無色の結晶を沈殿する.猛毒.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シアン化金」の意味・わかりやすい解説

シアン化金
シアンかきん
gold cyanide

(1) シアン化金 (I)   AuCN 。黄色板状晶。水に溶けにくく,希酸によって分解されない。 (2) シアン化金 (III)   Au(CN)3 。3水塩は潮解性の無色結晶。 50℃で分解する。猛毒。水に易溶。密栓して暗所に保存する。金メッキ材料などに用いられる。

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