ザーヒル派(読み)ザーヒルは(英語表記)Ẓāhir

改訂新版 世界大百科事典 「ザーヒル派」の意味・わかりやすい解説

ザーヒル派 (ザーヒルは)
Ẓāhir

法学者ダーウード・アッザーヒリーのもとに集まった弟子たちにより,バグダードに創始されたスンナ派イスラムの法学派。最初のうち,ダーウードDā`ūd派とも呼ばれていた。法源(ウスール)としてキヤース類推)を認めず,イジュマー合意)をサハーバ(預言者ムハンマドの教友)のそれだけに限り,コーランハディースの文字どおりの意味(ザーヒルẓāhir)に忠実に従わねばならないとした師の教えを忠実に継承した。10世紀以降もタクリード(先人模倣)を拒否し,イジュティハードの行使を強く主張した。早くホラーサーン,東部イランに伝えられたが,さしたる勢力とならなかった。イベリア半島では,イブン・ハズムのような熱烈な信奉者があったが,法学派としては強いまとまりがなく,12~13世紀ごろには消滅した。しかし,ザーヒル派のタクリード拒否は,後のイブン・トゥーマルトイブン・タイミーヤによって継承され,さらに現代のサラフィーヤの主張にまで影響を及ぼしている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ザーヒル派」の意味・わかりやすい解説

ザーヒル派
ザーヒルは
Ẓāhirīyah

イラクペルシア,ホラーサーン地方に広まったイスラム法学派の一つ。創始者ダーウード・イブン・アリー・イブン・ハラフ (815/8~884) の名にちなんでイラクではダーウード派とも呼ばれた。スンニー派四大法学派と異なり,法律上の規定はコーランと伝承 (ハディース) の原文自体の明確な (ザーヒル) 意味にのみ基づくべきであるとして,法学者の合意 (イジュマー) や類推 (キヤース) を認めなかった。

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