ザンダー

百科事典マイペディア 「ザンダー」の意味・わかりやすい解説

ザンダー

ドイツの写真家。ケルン郊外のヘドルフ生れ。叔父の援助で写真機材を入手し,独学で写真を学ぶ。いくつかの写真スタジオ助手として働いた後,1904年にリンツでスタジオを開業。1906年初の個展を開催。1910年からケルン近郊の農民を撮り始めるが,これはライフワークとして継続され,最終的に未完に終わった《20世紀の人間たち》の作業のはじまりとなった。壮大な計画の原型である60点の肖像写真からなる写真集《時代の顔》(1929年)の予告によれば,《20世紀の人間たち》は,12点のポートレートからなる45のファイルに収められた肖像写真によって当時のドイツの社会構造を明らかにしようとする野心的な計画だった。1934年ナチの弾圧により《時代の顔》は発禁となって,中止を余儀なくされ4万枚のネガのうち1万枚のみが戦禍を逃れた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ザンダー」の意味・わかりやすい解説

ザンダー
ざんだー
August Sander
(1876―1964)

ドイツの写真家。ジーゲン近郊に生まれ、ドレスデン絵画を学ぶ。兵役、鉱山夫を経て、営業写真館の助手となり各地を転々としたのち、1904年に独立する。職業遍歴と放浪生活の経験、絵画の素養をともに生かした鋭いまなざしで、20世紀初頭のドイツ国民のあらゆる階層、あらゆる職種の人物たちの、溌剌(はつらつ)とした肖像写真を数多く撮った。それらは29年『時代の顔』と題して刊行され、今日に至るまで優れた肖像写真集としてのみならず、社会学的資料としても重要視されている。

[平木 収]

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