ザボロツキー(英語表記)Nikolai Alekseevich Zabolotskii

改訂新版 世界大百科事典 「ザボロツキー」の意味・わかりやすい解説

ザボロツキー
Nikolai Alekseevich Zabolotskii
生没年:1903-58

ソ連邦詩人,翻訳者。農業技師の家庭に生まれ,初めモスクワの医科大学に学ぶが,そこを中退してレニングラードのゲルツェン教育大学文学部を卒業。1923年より文筆活動を始め,宇宙のなかでの人間の立場を哲学的に考察した一連抒情詩で注目を浴びた。叙事詩《農業の勝利》(1933)では,晩年の立場に近い,人間の理性と仕事が自然のカオス的世界に調和をもたらすという考えを表明している。しかし,36年の大粛清に際しては不当に逮捕され,極東へ流刑された。46年にモスクワへ帰るまで肉体労働や製図工として働いた。その間,《変身》(1937),《広野のなかの市》(1947)などの詩集がある。50年代中ごろから社会的問題に関心をもち,《失敗者》(1953),《請願者》(1954),《老女優》(1956)などの詩集を発表,作風にはチュッチェフ,N.A.ネクラーソフの影響がみられる。《イーゴリ軍記》の現代訳者としても有名。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ザボロツキー」の意味・わかりやすい解説

ザボロツキー
ざぼろつきー
Николай Алексеевич Заболоцкий/Nikolay Alekseevich Zabolotskiy
(1903―1958)

ロシアの詩人。レニングラード(現、サンクト・ペテルブルグ)のゲルツェン教育大学文学部を1925年に卒業してから、児童文学の作品を発表していたが、1929年処女詩集『コラム』で詩人として認められた。1938~1946年、無実の罪で逮捕され、極東の強制収容所に送られ、製図工、土建労働者として働く。釈放後は文壇に戻り、人間、自然、科学技術を賛美する哲学的叙情詩を書き、未来派の影響を脱した独自の詩風を確立した。優れた翻訳者、とくにシラーイタリアの詩人たち、ジョージアグルジア)の民族詩人ルスタベリの紹介者として知られる。ほかに『第二の書』(1937)、『詩集』(1948、1957)など。

[中本信幸]

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