サンポウカン(読み)さんぽうかん

改訂新版 世界大百科事典 「サンポウカン」の意味・わかりやすい解説

サンポウカン (三宝柑)
Citrus sulcata hort.ex Takahashi

独特の果形をしたかんきつ類。名は三宝(三方)で殿様に献上したところに由来する。江戸時代,和歌山城内に原木があって,当時は門外不出だったが,明治時代になり禁制がとけ一般に栽培されるようになったといわれる。主産地の有田郡湯浅町には1880年に導入された。和歌山,三重県で栽培されるが生産の伸びは少ない。常緑性で,樹高4~5m。樹勢は強いが,枝は下垂する。強い枝にはとげを生じる。葉には小翼葉がある。耐寒性,耐病性にすぐれ,栽培容易で豊産である。白色5弁の花が5月に咲き,果実は冬季着色し,3~4月に熟し,200~250g。果梗部はカラー(襟)状に盛り上がる。淡黄橙色の果皮は粗くて厚いが,むきやすい。果肉淡黄色で柔らかい。苦みはなく,淡白だが爽快な味。凍害果,遅採り果はす上がりしやすい。種子が多く,多胚性。もっぱら生食用として晩春から初夏に出荷される。形がおもしろく,作りやすいので大型の鉢物にもされる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サンポウカン」の意味・わかりやすい解説

サンポウカン
さんぽうかん / 三宝柑
[学] Citrus sulcata Takahashi

ミカン科(APG分類:ミカン科)の常緑中高木。皮はむきやすく、瓤嚢(じょうのう)(袋)は12個内外、種子数は約30個。果肉は多汁で甘味酸味が調和し、香気がある。果柄部が突き出ているため、その形からツボカン(壺柑)、ダルマカン(達磨柑)、ホゾダカカン(臍高柑)などの別名がある。和歌山県の原産。江戸時代、和歌山城内にあった木の実を三方(さんぼう)にのせて紀州侯に献上したことから、この名が出たという。当時は門外不出であったが、明治になって、現在の和歌山県有田郡有田川町に大江城平(おおえじょうへい)が導入し、栽培が一般化された。以後、同郡および海草(かいそう)郡に普及し特産となった。

[飯塚宗夫 2020年10月16日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android