サンソム(William Sansom)(読み)さんそむ(英語表記)William Sansom

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

サンソム(William Sansom)
さんそむ
William Sansom
(1912―1976)

イギリスの短編作家、小説家、旅行作家。ロンドン生まれ。名門パブリック・スクールのアッピンガム校に学び、ボンでドイツ語を学ぶ。ヨーロッパ各地を旅行した後、銀行、広告会社で働き、第二次世界大戦中はロンドンで消防士となる。その間雑誌に短編小説を投稿していたが、ドイツ軍の電撃戦に触発されて作家生活に入り、『ホライズン』『ペンギン・ニュー・ライティング』誌などを中心に創作活動を展開した。作風はイギリスの伝統的な小説の流れに属し、社会風俗を描きながら、そのなかに生きる人間のふとした感情の機微を鮮やかに浮かび上がらせるのを特徴とする。服装など物の細部について的確な描写を重ねるうちに、場の雰囲気を醸成し、人物の心理に焦点を絞ってゆく手法と、それを支える緊密な構成を身上とし、そのゆえに現代イギリス短編小説の大家と目される。『消防士の華』(1944)、『たいへんなこと、すてきなこと』(1948)、『マーマレード・バード』(1973)など多数の短編集のほか、『肉体』(1949)、『無邪気な顔』(1951)、『グッドバイ』(1966)などの小説、ノンフィクション『コルシカ、イタリー、南仏瞥見(べっけん)』(1948)などがある。

[佐野 晃]

『福田陸太郎訳『検札官』(1995・英宝社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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