サンソビーノ(英語表記)Jacopo Sansovino

精選版 日本国語大辞典 「サンソビーノ」の意味・読み・例文・類語

サンソビーノ

(Jacopo Sansovino ヤコポ━) イタリア‐ルネサンス期の彫刻家建築家。本名ヤコポ=タッティ。アンドレア=サンソビーノの弟子建築ではサンマルコ図書館、同小広場、彫刻では同大聖堂の聖器室の青銅扉の浮彫りなどを残す。(一四八六‐一五七〇

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「サンソビーノ」の意味・わかりやすい解説

サンソビーノ
Jacopo Sansovino
生没年:1486-1570

ルネサンス期ベネチアの都市形成に貢献したイタリアの彫刻家,建築家。生地フィレンツェサンソビーノから彫刻を学び,師の姓を受け継ぐ。師およびG.daサンガロとともにローマに出てブラマンテ作風に接し,古典主義建築の理解を深めた。1519年,当代一流の建築家が加わったサン・ジョバンニ・デイ・フィオレンティーニ教会の競技設計に入選,一躍建築家として名を成すが,当選案の工事が進捗せず,27年のローマ劫掠を機にベネチアへ移り住んだ。29年以降,公共建築行政主任として,サン・マルコ広場の整備をはじめ,公共建築,教会堂,慈善施設,パラッツォ,ビラをつぎつぎと設計した。正統的古典様式を守りつつ,そこにベネチア建築の豊かな装飾性を反映させ,重厚さ,彫塑性,豊醇さ,明暗の対比効果を生かした優美さをあわせもつ建築造形を完成させた。彫刻は,初期(《パルトの聖母》《バッコス》)には平易で優美な造形性が,またベネチア期(《マルコの奇跡》《聖母子》)にはそれに加えて,柔らかい彫塑性に光の効果を計算した動きのある構成がみられ,作風は建築作品と共通する。代表的建築作品にサン・マルコ図書館,造幣局兼宝物庫(ゼッカ),ビラ・グラドリ,カ・コルネル(ベネチア市内最大の邸宅で,18世紀までの貴族住宅典型となった)がある。
執筆者:

サンソビーノ
Sansovino
生没年:1460ころ-1529

イタリア・ルネサンスの彫刻家・建築家。本名コントゥッチAndrea Contucci。アレッツォ近郊モンテ・サン・サビーノ生れ。A.ポライウオロのもとで学ぶ。1491-1501年ポルトガルに滞在。その後フィレンツェ,ローマ,ロレート制作墓碑彫刻を多く手がける(大理石作品が多い)。ヤコポ・サンソビーノ(彫刻家で建築家)は彼の弟子。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サンソビーノ」の意味・わかりやすい解説

サンソビーノ
Sansovino, Jacopo

[生]1486.7.2.〈洗礼〉フィレンツェ
[没]1570.11.27. ベネチア
イタリアの彫刻家,建築家。本名 Jacopo Tatti。師アンドレア・サンソビーノの名を継いだ。ローマでドナト・ブラマンテに建築を学び,フィレンツェ,ローマで活躍し,1527年以降ベネチアに定住。絵画のティツィアーノ・ベチェリオと並び称された。建築ではサン・マルコの図書館(1536着工,完成は死後ビンチェンツォ・スカモッツィによる),サン・マルコ広場の鐘塔基部のロジェッタと呼ばれるポーチ,彫刻ではベネチア総督官邸(パラッツォ・ドゥカーレ)中庭の『マルス』と『ネプチューン』の大理石像などが有名。

サンソビーノ
Sansovino, Andrea

[生]1460頃.モンテサンソビーノ
[没]1529. ロレート
イタリアの彫刻家,建築家。本名アンドレア・コントゥッチ。 A.ポライウォロの工房に学んだが,ブラマンテ,ラファエロの古典様式の影響を受けた。 1491~99年に L.メディチに派遣されて2度ポルトガルへ行ったが,そこでの活動は知られていない。最初の記念すべき作品はフィレンツェのサン・ジョバンニ洗礼堂の『キリストの洗礼』 (1502~05) 。 1505~12年にローマで制作した古典的作風の頂点を示す2つの墓碑『アスカニオ・スフォルツァ枢機卿墓碑』 (09,サンタ・デル・ポポロ聖堂内) ,『ジロラモ・パッソ・デラ・ローベレ枢機卿墓碑』 (09,同) は,16世紀に流行した墓碑形式を決定した。 13年より教皇レオ 10世の命を受けてロレートのサンタ・カーサ聖堂の彫刻主任として働き,『聖告』 (18~24) ,『牧者の礼拝』 (18~24) などの浮彫を制作した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「サンソビーノ」の意味・わかりやすい解説

サンソビーノ

イタリアの建築家,彫刻家。本名Jacopo Tatti。フィレンツェ生れ。アンドレア・サンソビーノに学び,のちローマでブラマンテに学んだ。1527年ベネチアに移り,絵画的効果の強い様式を確立し,絵画におけるティツィアーノと並んで建築・彫刻界の重鎮となった。建築の代表作としてはサン・マルコ図書館,彫刻ではサン・マルコ大聖堂聖器室の青銅扉の浮彫,パラッツォ・ドゥカーレの《マルスとネプチューン》等がすぐれている。
→関連項目スカモッツィ

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のサンソビーノの言及

【ベネチア】より

… 16世紀に入ると,共和国の本土進出とともにルネサンス文化がこの町にも流入し,建築様式にも大きな変化が生まれた。なかでもローマから来た古典主義建築家J.サンソビーノはサン・マルコ大聖堂の主任建築家として,サン・マルコ広場周辺の図書館,造幣局,ロジェッタ(鐘楼の下部にある柱廊)などの公共建築の建設に手腕をみせた。とくに,パラッツォ・ドゥカーレの対面に図書館がつくられたことによって,小広場(ピアツェッタ)に,〈ムーア人の時計塔〉を焦点とする透視図法的な都市空間がつくり出され,共和国の海からの正面玄関を完成させた。…

※「サンソビーノ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android