サンゴジュ(読み)さんごじゅ

改訂新版 世界大百科事典 「サンゴジュ」の意味・わかりやすい解説

サンゴジュ (珊瑚樹)
Viburnum odoratissimum Ker-Gawl.

常緑樹林内にはえるスイカズラ科の高木。刈り込むとよく茂るため,近年は生垣として多用されるが,古くから防火樹とされた。挿木でよくふえ,生長も早い。高さ6~10m,材に水分が多く,燃やすと泡をふくのでアワブキ別名がある。葉は長楕円形,長さ7~15cm,常緑で光沢がある。花は枝の先に多数集まって円錐状となり,6月に咲く。花冠は白く,合弁で5裂する。子房下位,3心皮からなるが,稔性胚珠は1個。花柱は短く,柱頭は頭状。果実は長さ6~7mmの楕円体,初めは赤く,後に黒くなる。名まえはこの赤い実を多数つけたところをサンゴにみたててつけられた。核には1本の深い溝があるが,これは胎座のふくらみの発達したものである。本州(千葉県以西の海岸),四国,九州,中国南部,インドシナ半島,フィリピン,さらにセレベスまで南下して分布する。

 ゴマV.sieboldii Miq.は枝や葉を折るとゴマのにおいがする。琉球特産のゴモジュV.suspensum Lindl.は花が美しく,ときに庭木とする。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サンゴジュ」の意味・わかりやすい解説

サンゴジュ
さんごじゅ / 珊瑚樹
[学] Viburnum odoratissimum Ker Gawl.

スイカズラ科(APG分類:ガマズミ科)の常緑高木。高さ10メートルに達する。葉は長楕円(ちょうだえん)形、質は厚く表面に光沢がある。6月、多数の花を円錐(えんすい)花序につける。花冠は白く、短い筒があり、5裂する。子房は下位で1室。果実は球形で初め赤く、のちに黒くなり、核には1本の深い溝がある。千葉県以西の本州の海岸から沖縄、および朝鮮半島南部、中国南部、インドシナ半島、フィリピンなどに分布する。よく分枝し刈り込みに耐えるので、古くから生け垣として利用され、海岸では防風林とする。アワブキの別名があるように材に水分が多く、燃えると泡を吹き、葉は炎を出さないので防火樹ともする。挿木でよく殖える。名は果実が赤く熟し、サンゴのようにみえることからついた。

福岡誠行 2021年12月14日]


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