サバンナ号(読み)さばんなごう(英語表記)Savannah

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サバンナ号」の意味・わかりやすい解説

サバンナ号
さばんなごう
Savannah

(1)汽船として初めて北大西洋横断に成功したアメリカの外輪蒸気船。1818年8月、ニューヨークのクロッカー・アンド・フィケット造船所で進水したシップ型帆船。全長33.5メートル、幅7.86メートル、320トンで、90指示馬力の補助機関を備えていた。外輪は外幅11メートルで、扇式に畳んで甲板に格納できた。1819年5月24日母港サバナ(サバンナ)を出帆し、29日11時間で大西洋を横断してリバプールに到着した。その間の機関使用総時間は85時間で残りは帆走によったが、初期の汽船は大部分が補助帆付きであったので、大西洋を最初に横断した汽船として認められている。

(2)アメリカ最初の原子力商船。初代サバンナ号を記念して命名された。ニューヨーク造船所で1957年起工、1962年3月完成。満載排水量2万1850トン、1万2220総トン、貨物積載量1万トン、最大搭載人員184人、全長181.5メートル、幅23.8メートルの貨客船である。原子炉はバブコック・アンド・ウィルコックス社製の加圧水型で熱出力6万9000キロワット、最大出力2万2000馬力、最大速力21ノット、補助機関による速力7ノットで、燃料交換なしに3年4か月航海できた。しかし現在では、運航費がかかりすぎるなどの問題があり、廃船となっている。1991年に国定歴史建造物に指定され、船体修理、保管されている。

[茂在寅男]


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改訂新版 世界大百科事典 「サバンナ号」の意味・わかりやすい解説

サバンナ号 (サバンナごう)
Savanna

(1)蒸気船として初めて大西洋を横断したアメリカの船。1818年ニューヨークで建造。長さ33m,幅7.8m,320総トン,3本マストの木造帆船だが蒸気機関も据え付けられ,煙や火の粉で帆を損傷しないために煙突の先端が曲がり,回転できるようになっていた。蒸気機関と連絡された推進用の外車は船体中央部の左右両玄に取り付けられたが,使用しないときは折り畳んで甲板上に引き上げ格納することが可能であった。19年アメリカ東岸サバンナを出港,27日と11時間を要してイギリスのリバプール港へ到着した。しかし実際に蒸気の力で航走したのは85時間にすぎず,大半は帆による帆走であった。

(2)アメリカが建造した世界で最初の原子力商船。大西洋横断のサバンナ号にちなんで名付けられたもので,1962年完成。全長182m,1万2220総トン,加圧水型原子炉1基を装備し機関出力は2万2000馬力。貨物1万t,旅客60人を収容する貨客船であったが,65年からは客室を閉じ貨物船として大西洋航路に就航,70年からはテキサス州ガルベストンに係船されている。運航採算が合わず商業的には成功しなかった。
原子力船
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百科事典マイペディア 「サバンナ号」の意味・わかりやすい解説

サバンナ号【サバンナごう】

(1)蒸気船として初めて大西洋を横断した米国船。1818年建造,1819年に米国東岸のサバンナから英国のリバプールへ,27日と11時間で航海。(2)米国が建造した世界最初の原子力商船。1962年完成,1万2220総トン。加圧水型原子炉1基,機関出力2万2000馬力,速力20ノット。貨物1万t,旅客60人を収容。1965年から客室を閉じ貨物船として就航したが,採算がとれず,商業的には不成功に終わった。
→関連項目原子力船

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世界大百科事典(旧版)内のサバンナ号の言及

【汽船】より

…蒸気船による営業運航に成功した最初がフルトンのクラモント号であり,その後,蒸気船がだんだんと帆船に代わるようになったことから,フルトンが蒸気船の父とされているのである。蒸気船による最初の大西洋横断は,1819年,90馬力の蒸気機関を積んだサバンナ号によるもので,27日と11時間かかっているが,全航程中,蒸気力で走ったのは1/8で,後は帆走であったとされている。蒸気力だけで大西洋を横断したのは38年のイギリスの蒸気船シリウス号Sirius(703総トン,320馬力)とグレート・ウェスタン号(1321総トン,750馬力)で,同じ日であり,前者のニューヨーク到着が4時間早かった。…

【原子力船】より


[原子力船の歴史]
 アメリカにおいては1954年に原子力潜水艦ノーチラス号が進水した。この技術を基礎として,56年には原子力平和利用の一つとして貨客船のサバンナ号の建造が決まり,62年に完成した。アメリカではほかに,原子力コンテナー船や原子力タンカーの建造を目標として,研究開発が行われてきている。…

※「サバンナ号」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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