サバジオス(英語表記)Sabazios

改訂新版 世界大百科事典 「サバジオス」の意味・わかりやすい解説

サバジオス
Sabazios

古代小アジア西部のフリュギアおよびリュディア地方を中心に崇拝された豊穣神。ギリシアへは前5世紀ごろに伝わり,しばしばディオニュソスと同一視された。彼の聖獣のうちでは蛇が最も重要視され,前4世紀のアテナイの雄弁家デモステネスによれば,信者たちは彼の祭り行列で,きつく握りしめた蛇をふりまわしながら熱狂乱舞したという。2世紀にはイタリアでも広く崇拝された。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サバジオス」の意味・わかりやすい解説

サバジオス
Sabazios

フリュギアないしトラキアの神。ギリシアでは,しばしばディオニュソスやその前身ザグレウスと同一視され,またときにゼウスと同一視される。サバジオス崇拝はキュベレアッティスの崇拝と結びついて,前5世紀頃ギリシアに移入されたが,自己陶酔的な狂乱を伴うのが特徴で,へびが重要な役割をになっている。また前2世紀末には,小アジアのユダヤ人たちは彼とゼウスとを同一視し,さらにそれを彼らの万軍の主なる神 the Lord of Sabaothと同一視した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サバジオス」の意味・わかりやすい解説

サバジオス
さばじおす
Sabāzios

トラキア、フリギアの神。その信仰は小アジアが中心で、ギリシアへは紀元前5世紀末に流入し、ゼウスとペルセフォネの子とされた。またその狂乱を伴う信仰儀式からディオニソスと同一視されたが、信仰が盛んになったのはヘレニズム時代(前330~前30)以降のことである。父ゼウスが蛇に姿を変えてペルセフォネと交わったことから、この神は蛇を聖獣とするが、この神自身も蛇の姿で巫女(みこ)たちと交わり、多くの子をなしたという。

[丹下和彦]

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