サツマニシキ(読み)さつまにしき

改訂新版 世界大百科事典 「サツマニシキ」の意味・わかりやすい解説

サツマニシキ (薩摩錦)
Erasmia pulchella

鱗翅目マダラガ科の昆虫。翅の開張7~8cm。翅がるり色に輝き,前翅に赤色帯のある美しい大型のガ。昼飛性で,つかまえると胸部から悪臭のある体液を出すため,鳥その他虫食性の哺乳類の攻撃から身の安全を守ることができる。幼虫ヤマモガシに寄生するが,成虫と同じように鳥獣のきらう体液をもっている。温暖地のガで,本州紀伊半島から南に分布する。本州,四国,九州のものは後翅白色部が狭く,全体としてもっとも暗い色をし,沖縄本島のものは白色部が拡大され,屋久島と種子島のものはその中間的な色彩を示す。石垣島や西表島のものはるり色の輝きがもっとも鮮やかである。そのほか中国,台湾からインドまで,東南アジアに広く分布し,地域によって色彩が変化する。触角櫛歯(くしば)状だが,雄のほうが櫛歯が長い。和名は,日本で最初に発見された薩摩(現,鹿児島県)の錦(華麗な絹織物)という意味である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サツマニシキ」の意味・わかりやすい解説

サツマニシキ
さつまにしき / 薩摩錦
[学] Erasmia pulchella

昆虫綱鱗翅(りんし)目マダラガ科に属するガ。はねの開張70~80ミリメートル。大形の美麗種で、黒地に青緑色の光沢のある斑紋(はんもん)があり、前翅には赤褐色帯がある。前後翅の外半にある白紋の発達の程度は、地理的に変化する。紀伊半島以南に分布する南方系の種で、南西諸島から台湾、中国南部からインドまで、東南アジアの熱帯から亜熱帯に広く分布する。日本の本州産のものはもっとも黒みが強く、沖縄県産では後翅の中央部が広くて白色を帯び、後翅基部近くの青色が明るく美しい。昼飛性で、とらえると、悪臭のある体液を出す。幼虫はヤマモガシの葉を食べる。

[井上 寛]


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