日本大百科全書(ニッポニカ)「ササ」の解説
ササ
ささ / 笹
bamboo grass
イネ科(APG分類:イネ科)のタケ・ササ類。タケとの間にははっきりした区別はないが、一般に丈が低く、茎が細いものを総称していう。昔は利用面から材(稈(かん))を利用するものがタケ、葉を利用するものがササとされた。いまはタケノコから成竹になるとき、竹の皮が落ちるものをタケ類、いつまでもついているものをササ類と便宜上区別している。植物学的にはササ類にササ属、スズタケ属、ヤダケ属、アズマザサ属、メダケ属、カンチク属がある。このうちササ属は日本が分布の中心をなし、全国に種類、量ともに多い。日本以外では、樺太(からふと)(サハリン)、千島それぞれの南半部、および朝鮮半島に産するだけである。代表的な種類はチシマザサ、クマザサ、チマキザサ、ミヤコザサなどで、稈の基部が斜上し、一つの節から1本の枝が出る。葉鞘(ようしょう)の上縁部にある肩毛(けんもう)はざらつき、花には雄しべが6本ある。
葉は防腐作用があり、ちまきをはじめ、菓子などを包み、生魚の贈り物には古来の習わしとしてササの葉が添えられ、また漢方薬の原料や家畜の飼料ともなる。稈は筆軸、竹細工、製紙原料となる。このほか、よく観賞用としたり、傾斜地の土止めに植えられる。また紋様として家紋にも用いられる。ササ群落は植林のじゃまになり、また開花結実のときは野ネズミが増えるとして林業家から嫌われることもあるが、昔、ササの実は凶作の際の食料として役だったこともある。ササの名は、風に吹かれて葉と葉が擦れ、ササ、ササと音を発することからおこったという説と、ササダケ(細小竹)の下略であるという説がある。
[鈴木貞雄 2019年8月20日]