ササキリ(英語表記)Conocephalus melas

改訂新版 世界大百科事典 「ササキリ」の意味・わかりやすい解説

ササキリ
Conocephalus melas

直翅目キリギリス科の昆虫。小型のキリギリス類であるササキリ類の中の代表種。他のササキリ類は明るい草原にすむが,本種は林縁の日陰になっているササ葉上にすむ。成虫は夏から秋にかけて出現し,雄は日中ジリジリと鳴く。本州以西,中国東南アジアに広く分布するが,本州では東京以西で,中部の高地にはいない。雑食性で,ウスイロササキリなどはニカメイガの卵などを食べることもある。ササキリ類の中では,太めの体つきで,体長は13mm内外。複眼の後ろから前胸背板側方へかけての部分,さらにこれに続く前翅の部分と前翅先端部,前肢の脛節けいせつ)と跗節(ふせつ),後肢のひざ部などが黒色で,他の部分は緑色ないし褐色。前頭頂は台形で,複眼は球形でよく突出している。雄の尾角の中央内側には先のとがる強い内枝をもち,雌の産卵管は短い剣状である。幼虫は成虫と同様の環境にすみ,橙赤色と黒色の2色に顕著に塗り分けられた体色をもち,とくに頭部の橙赤色は目だつ。なお明るい草原にすむササキリ類には日本ではほかにウスイロササキリC.chinensisホシササキリC.maculatus,オナガササキリC.gladiatusなどが知られており,尾角や産卵管の形状で区別される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ササキリ」の意味・わかりやすい解説

ササキリ
ささきり / 笹螽蟖
笹切
[学] Conocephalus melas

昆虫綱直翅(ちょくし)目キリギリス科に属する昆虫。小形のキリギリス類の1種で、林縁の日陰になったササの葉上などで生活している。体長13ミリメートル内外。同様の小形のキリギリス類のなかではやや太めの種で、頭頂はやや突出し、複眼は球形で大きい。後脚(こうきゃく)の腿節(たいせつ)の中央から基部寄りはやや太めである。緑色型と褐色型があり、両型とも触角基部、複眼後方から前胸背側面にかけての部分、前翅の前胸背側面に続く部分と先端部、前脚の脛節(けいせつ)と跗節(ふせつ)、後脚の膝部(しつぶ)などは黒色で、その顕著な色彩の対比は他種にないので、区別は容易である。本州から沖縄まで普通にみられ、また東南アジアにかけて広く分布する。成虫は日本では夏から秋にかけてみられ、雄はジリジリと鳴く。なお、幼虫は顔面が赤みを帯び、体は黒色で、この種の幼虫と思えないような色彩をしている。ササキリ類は、日本では、この種のほか、本州以北、沿海州などに分布するウスイロササキリC. chinensis、本州以南、中国などに分布するコバネササキリC. japonicus、本州から東南アジアにかけて広く分布するホシササキリC. maculatusほか数種がみられる。

[山崎柄根]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ササキリ」の意味・わかりやすい解説

ササキリ
Conocephalus melas

直翅目キリギリス科。体長 12~15mm,翅端まで 20mm内外。体は細く,褐色または緑色であるが,頭部から前胸の両側を経て前翅のそれに続く部分と先端部,前肢の脛節と 跗節,後肢の膝部などは黒色である。頭部は短く,複眼は大きく球形で,触角は糸状で長い。雄はよく鳴く。山地の林間の草地に多く,本州以南の日本全土,台湾,東南アジアに広く分布する。 (→キリギリス , 直翅類 )

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百科事典マイペディア 「ササキリ」の意味・わかりやすい解説

ササキリ

直翅(ちょくし)目キリギリス科の昆虫の1種。体長(翅端まで)20mm内外,緑色ないし褐色で,翅は淡褐色。本州中部以南〜台湾,東南アジアに分布。7〜8月,林間の草地に多く,シリシリ……と鳴く。ウスイロササキリなど近縁種が多く,すみ場所,分布,鳴き方などが多少異なる。

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