サクラ(桜)(読み)サクラ

百科事典マイペディア 「サクラ(桜)」の意味・わかりやすい解説

サクラ(桜)【サクラ】

バラ科サクラ属の樹木の中で花が美しく,観賞されるものを一般にサクラと呼ぶ。アジア東部〜ヒマラヤに固有で,日本にはヤマザクラエゾヤマザクラオオヤマザクラ),カスミザクラ,オオシマザクラなどのヤマザクラ系の種類と,これに似たチョウジザクラマメザクラミネザクラヒガンザクラが自生し,中国大陸南部,台湾原産のカンヒザクラヒカンザクラ)も暖地に植えられている。 これらのほか,日本では古来観賞用に栽培されていただけに園芸品種が多数あり,これらはその細かい系統いかんにかかわらずサトザクラ(里桜),としてまとめられる。そのうち大多数は広い意味のヤマザクラ系のサクラで,特にオオシマザクラ系統の品種が多い。またヤマザクラ系以外のサクラとの間種と推定される品種も多い。花には一重咲(ソメイヨシノ,寒桜(かんざくら)),八重咲,菊咲,二段咲があり,また種子から数年で開花する幼型(ワカキノサクラ)もできている。花色も白色から,やや濃い桃色までが多いが,緑化して黄緑色となったもの(鬱金(うこん),御衣黄(ぎょいこう))も知られている。子房は1個が多いが,まれに2個のものや,また葉化した品種(普賢象(ふげんぞう),一葉(いちよう),関山(かんざん))もある。 サクラは古来万葉集など詩歌にうたわれ,愛されてきた。ウメに代わって左近の桜が植えられたのは桓武天皇の時代といわれる。八重咲のサクラは平安時代にすでに知られていたが,特に江戸時代に入ってからは多数の品種が育成され,今日に残っているものが多い。用途としては,材は版木として重要で,細工物にもよく,樹皮はタバコ入れなどの細工物となるほか,これから咳(せき)止薬が作られる。八重咲の品種の花を塩漬にしたものは熱湯に入れて祝事に飲用,オオシマザクラの葉は桜餅(もち)を包むのに使う。繁殖は実生(みしょう),接木挿木などによる。大気汚染には弱い。なおサクランボは同じサクラ属の果樹オウトウセイヨウミザクラ)の果実をさす。
→関連項目指標植物万葉植物

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サクラ(桜)」の意味・わかりやすい解説

サクラ(桜)
サクラ
cherry tree

バラ科サクラ属 Prunusのなかで,美しい花を咲かせる十数種の総称。昔から日本の国花として愛好され,古くはヤマザクラ (山桜)系統のものが主であったが,今日ではソメイヨシノ (染井吉野)が圧倒的に普及している。葉は互生し,楕円形または倒卵形,縁に鋸歯があり,葉身の基部両側に1対の蜜腺がある。春,葉に先立って,あるいは葉とともに開花する。萼片は5枚,花弁は紅色または白色で,普通5枚が萼筒の上端につく。おしべは多数,めしべは1本。日本の山野に自生したり栽培される種類には,ヤマザクラ,オオシマザクラ,カスミザクラ,サトザクラ (里桜),ヒガンザクラ,マメザクラ (豆桜)などがあり,ソメイヨシノはオオシマザクラとヒガンザクラとの雑種と考えられている。

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