サイホウチョウ(読み)さいほうちょう(英語表記)tailorbird

翻訳|tailorbird

改訂新版 世界大百科事典 「サイホウチョウ」の意味・わかりやすい解説

サイホウチョウ (裁縫鳥)
tailorbird

スズメ目ヒタキ科サイホウチョウ属Orthotomusの鳥の総称。この属には約10種が含まれ,パキスタン,インドからフィリピン,ボルネオ,バリにかけて分布している。全長11~13cm。全体に褐色やオリーブ緑色のじみな羽色をしており,くちばしは比較的長く,やや下に湾曲している。尾はミソサザイのようにぴんとたてることができる。明るい林,竹林庭園などにすみ,枝葉の間を動き回りながら昆虫をとって食べる。単独またはつがいで生活していることが多く,群れになることはあまりない。名はその造巣習性に由来している。すなわち,この鳥は大きな葉の縁と縁をクモの糸などでつなぎとめて袋状にし,その中に植物の綿羽などを入れて巣をつくるのである。1腹の卵数は3~6個,抱卵はおもに雌が行い,育雛(いくすう)は雌雄ともに行う。代表種のオナガサイホウチョウO.sutoriusは分布がいちばん広い。全身オリーブ緑色で,尾が長く,額部と脚の付け根付近が赤褐色をしている。パキスタン,インドからジャワまで分布し,人家付近にすんでいて,南アジアではふつうに見られる鳥の一つである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サイホウチョウ」の意味・わかりやすい解説

サイホウチョウ
さいほうちょう / 裁縫鳥
tailorbird

鳥綱スズメ目ヒタキ科ウグイス亜科サイホウチョウ属に含まれる鳥の総称。この属Orthotomusの約10種のうちに、枝についたままの大きな木の葉1、2枚を、クモの糸などを用いてびょうで留めるように縫い合わせて巣をつくる種があり、和名英名は、この習性からつけられた。イギリスの小説家キップリングJ. R. Kiplingが『ジャングル・ブック』で紹介してから、広く知れ渡った。インドから大スンダ列島にかけて分布し、各種とも渡りはしない。いずれもやぶの中で昆虫を捕食する。

 人家近くにすむことが多く、人々になじみが深いオナガサイホウチョウO. sutoriusは、全長約13センチメートル、嘴(くちばし)はやや長く下に曲がっており、長い尾を垂直に立てる習性がある。額から頭頂にかけて赤褐色のほかは、上面がオリーブ褐色、下面は灰色をしている。チーヤッと聞こえる単純な声を繰り返して鳴き、聞いている人間をしだいにいらいらさせる鳥として悪名が高い。

[竹下信雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サイホウチョウ」の意味・わかりやすい解説

サイホウチョウ
Orthotomus; tailorbirds

スズメ目セッカ科サイホウチョウ属の鳥の総称。全長 12~16cmで,12種からなる。羽色は一般に背面がオリーブ色または褐色で,下面は白い。大きめの 2枚の葉の縁を植物の繊維やクモの糸で縫い合わせて袋状の巣をつくることで有名で,英名,和名ともこの習性に由来する。袋状の巣内には草などを敷く。南アジア,ヒマラヤ山脈東部,中国南部,東南アジアに分布し,開けた林や低木林,庭園などに生息する。アフリカ東部に生息するアフリカサイホウチョウ Artisornis metopias とハシナガイロムシクイ A. moreaui はサイホウチョウ属から除かれたが,巣づくりの習性は同様だと考えられる。

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