ゴンブルサ事件(読み)ゴンブルサじけん

改訂新版 世界大百科事典 「ゴンブルサ事件」の意味・わかりやすい解説

ゴンブルサ事件 (ゴンブルサじけん)

1872年2月17日フィリピンで3人の在俗神父ゴメスMariano Gomez(1799-1872),ブルゴス,サラモJacinto Zamora(1835-72)が処刑された事件。3人の姓の最初の音節をつないでゴンブルサGom-Bur-Za事件と呼ぶ。事件の直接の契機は,72年1月,ルソン島カビテ州のサン・フェリペ要塞で起きた暴動事件であった。ここで働く労働者は,従来トリブート(貢税)と強制労働を免除されていたが,この特権が突然廃止されたので,それを不服として暴動を起こした。暴動は一日足らずで鎮圧されたが,スペイン政庁は,当時勢力を増しつつあった民族主義的運動,フィリピン人在俗神父の権利擁護運動を弾圧する口実としてこの事件を利用した。すなわち,カビテの暴動は在俗神父の運動を指導していた人々によって教唆扇動されたものであるとして,運動の中心的推進者であった上述の3神父を絞首刑に処するとともに,9人の神父と10人の弁護士・実業家らをマリアナ諸島へ流刑した。この大弾圧によって,在俗神父の運動は現象的には潰滅したが,3神父の処刑はスペインの人種差別と圧制を象徴する事件として,フィリピン各地に衝撃波紋を呼び起こし,民族意識覚醒の原点となった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゴンブルサ事件」の意味・わかりやすい解説

ゴンブルサ事件
ゴンブルサじけん
Gomburza Incident

フィリピン民族主義運動初期の3神父処刑事件。ゴンブルサとは3人の姓であるゴメス,ブルゴス,サモーラの第1音節をとったもの。 1872年,マニラ南西方カビテ地区の労働者が反動的な総督ラファエル・デ・イスキエルドの政策に抗議して暴動を起こした。総督をはじめとするスペイン人らは,背後にフィリピン人在俗神父の扇動があったものとみて,同 1872年2月 17日,その代表格である3人を公開の場で絞首刑に処した。この事件はフィリピン民衆に大きな衝撃を与えた。ホセ・リサールの晩年の長編小説反逆暴力・革命』 (原題『離脱者』 El filibusterismo,1891) は,この事件を題材としている。

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