改訂新版 世界大百科事典 「ゴンズイ」の意味・わかりやすい解説
ゴンズイ (権瑞)
Plotosus anguillaris
ナマズ目ゴンズイ科の海産魚。ウミギギとも呼ばれる。本州中部以南,四国,九州,朝鮮半島南岸から南西太平洋,インド洋および紅海に広く分布し,岸近くの岩礁の間などにすむ。全長30cmに達し,体はやや長く,前部は太く,後部は左右に平たく細い。頭部は上下に平たく,口先はまるい。口びげは8本。背びれは2基で,第1背びれと左右の胸びれには各1本の堅いとげがある。このとげには毒腺があって刺されると激しく痛む。毒は魚の死後も残る。第2背びれとしりびれとのつけ根はともに長く,その後方は尾びれと連続する。地色は暗褐色で,頭部下面と腹面は淡黄色。体側には2本の狭い黄色縦帯がある。夜行性で昼間は岩礁や密生した海藻の中などに潜み多数集まって群れをなすことが多い。とくに幼期には大きな塊状の集団をなしていることがある。これを〈ゴンズイ玉〉と呼ぶ。夜間は水底を泳ぎながら甲殻類などの小動物をあさる。夜間の磯釣りのときかかることがあるので,刺されないように注意を要する。蒲焼き,てんぷらなどに料理すればまずくはないが,この魚を主目的とした漁業はなく,また釣りの対象としている地方もないようである。
執筆者:中村 守純
ゴンズイ
Euscaphis japonica (Thunb.) Kanitz
暖地の二次林などに生えるミツバウツギ科の落葉小高木で,初秋には赤い実のかたまりが著しい。高さ6mほどにもなり,毎年,枝先が枯れ落ちるので二叉(にさ)状に分枝する。葉は対生する奇数羽状複葉で,長さ20~40cm,小葉は2~5対あり,狭卵形ないし広披針形で長さ4~8cm,縁に鋭い細鋸歯がある。5月ころ新枝の先端に円錐花序を出し,黄緑色の小さい花をつける。萼片と花弁は同形で5個ずつ直立し,おしべも5本。8月,3個の袋果が紅く熟して裂け,薄い仮種皮に包まれた黒色の種子が1,2個ずつ垂れ下がる。本州(関東以西)・四国・九州・朝鮮半島南部,台湾,中国の暖帯,亜熱帯北部に分布する。東アジアにはゴンズイ1種のみが特産する。樹皮と葉に臭気があり,材を熊野権現の守札をつける牛王杖(ごおうづえ)か,まれに小細工物に使うほかは,ほとんど用途がない。ゴンズイの名は同じく役立たずの魚の名を借用したとも,あるいは牛王杖のなまったものともいう。しかし若葉は食べられるし,中国では種子を薬用にする。
執筆者:濱谷 稔夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報