コーンフォース(読み)こーんふぉーす(英語表記)John Warcup Cornforth

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コーンフォース」の意味・わかりやすい解説

コーンフォース
こーんふぉーす
John Warcup Cornforth
(1917―2013)

イギリスの化学者。オーストラリアシドニーで生まれる。1937年シドニー大学を卒業、さらにイギリスのオックスフォード大学に留学、ロビンソンの研究室に入り、有機化学を学び、おもにペニシリンについて研究した。1946年イギリスの医学研究評議会の研究員となり、ステロイド合成の研究を行った。1962年から1975年までシェル・リサーチ社のミルステッド化学酵素研究所で研究を続け、1975年にサセックス大学の教授となり、1982年まで務めた。彼は10歳ごろから聴力が衰え、大学時代にはまったく耳が聞こえなくなってしまった。その後の生活では公私ともに妻のリタRitaが支えとなった。

 コーンフォースは、コレステロールに注目し、その生体内での合成過程を研究した。彼はラジオ・アイソトープRI)をトレーサー(追跡子)に用いて、酢酸の二つの炭素分子をRIで標識し、コレステロールが生合成される各段階を詳しく解析した。また、その各段階における酵素の働きを立体化学の方面から研究し、多くの成果を得た。そのため、1975年に「酵素触媒反応の立体化学における業績」に対してノーベル化学賞を、プレローグとともに受賞した。

[編集部]

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化学辞典 第2版 「コーンフォース」の解説

コーンフォース
コーンフォース
Cornforth, John Warcup

オーストラリアの有機化学者.シドニーに生まれ,シドニー大学卒業後,奨学金を得てオックスフォード大学のR. Robinson(ロビンソン)のもとで学び,1941年博士号を取得.博士論文ではステロイド合成を扱ったが,第二次世界大戦期にはペニシリン研究に参加した.1946年イギリス医学研究会議(MRC),1962年にはシェル石油のMilstead化学酵素学研究所所長に就任,1971年からサセックス大学教授を務めた.R.B. Woodward(ウッドワード)が1951年にコレステロールの全合成に成功したのをきっかけに,細胞中でのステロイド類の生合成に興味を抱き,放射性トレーサーを利用して,酢酸からコレステロールが生合成される立体化学的経路を解明した.この業績により,1975年ノーベル化学賞を受賞した.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コーンフォース」の意味・わかりやすい解説

コーンフォース
Cornforth, Sir John

[生]1917.9.7. オーストラリア,シドニー
[没]2013.12.8. イギリス,サセックス
オーストラリア生まれのイギリスの化学者。耳硬化症のため耳が不自由だった。1937年シドニー大学を卒業,1941年オックスフォード大学で博士号を取得。同 1941年有機化学者のリタ・ハラデンスと結婚,公私にわたり協力者となる。第2次世界大戦中は,ペニシリンの研究で成果を上げた。ロンドンの国立医学研究所研究員(1946~65)を経て,1962~75年シェル・リサーチのミルステッド研究所所長を務めた。一方,1965~71年ウォリック大学教授,1971~82年サセックス大学教授も務めた。コレステロールの分子骨格を生合成する過程における酵素触媒反応の立体化学に関する業績によって,1975年ウラジーミル・プレログとともにノーベル化学賞を受賞した。1975年オーストラリアン・オブ・ザ・イヤーに選ばれ,1977年ナイトに叙された。

コーンフォース
Cornforth, Maurice

[生]1909
[没]1980
イギリスのマルクス主義哲学者。ロンドン大学ケンブリッジ大学に学び,1931年イギリス共産党に入党した。党の哲学理論の領域の担当者として,一方でマルクス主義哲学の学習書,入門書などを執筆し,他方で観念論哲学やプラグマティズム,論理実証主義などの批判的研究を行なっている。主著『哲学の擁護』 In Defence of Philosophy (1950) ,『弁証法的唯物論についての入門的講義』 Introductory Lectures of Dialectical Materialism (3巻,52~54) ,『開かれた哲学と開かれた社会』 Open Philosophy and Open Society (68) 。

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