コルタサル(読み)こるたさる(英語表記)Julio Cortázar

デジタル大辞泉 「コルタサル」の意味・読み・例文・類語

コルタサル(Julio Cortázar)

[1914~1984]アルゼンチン小説家詩人幻想作風で知られ、現代人苦悩と魂の彷徨ほうこうを描いた長編小説石蹴り遊び」は、現代ラテンアメリカ文学を代表する作品一つほかに、短編集「遊戯の終わり」など。

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精選版 日本国語大辞典 「コルタサル」の意味・読み・例文・類語

コルタサル

(Julio Cortázar フリオ━) ベルギー生まれのアルゼンチンの小説家、詩人。幻想的、前衛的な作品を発表代表作石蹴り遊び」「遊戯の終り」。(一九一四‐八四

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コルタサル」の意味・わかりやすい解説

コルタサル
こるたさる
Julio Cortázar
(1914―1984)

アルゼンチンの作家。ベルギーのブリュッセル生まれ。幼時から幻想文学に親しみ、ポーから決定的ともいえる影響を受けた。その後もコクトージャリロートレアモン、あるいはカフカジョイス、スペインのラモン・ゴメス・デ・ラ・セルナらの作品を読みふけり、文学的自己形成を行う。一時、地方の学校で教鞭(きょうべん)をとるが、そのときギリシア神話に題材をとる詩劇『王たち』(1949)を発表、ついで51年には幻想的短編を収めた『動物寓意譚(ぐういたん)』を出版し一部の注目を集めた。同年フランスに留学し、以後もそこにとどまり創作を続けた。

 懸賞に当選した人々を乗せた船で起こる事件を縦糸に、アルゼンチンの現代社会と人間の運命を浮き彫りにする小説『当籤者(とうせんしゃ)たち』(1960)で内外の注目を集め、さらに現代人の魂の彷徨(ほうこう)と愛の探究を描いた小説『石蹴(いしけ)り遊び』(1963)によって現代ラテンアメリカ文学の代表的作家と目される。「自分にとってものを書くのは悪魔祓(ばら)いの儀式」とコルタサルは語る。ほかにも不気味な幻想をたたえた『遊戯の終り』(1956)、『秘密の武器』(1959)、『すべての火は火』(1966)、『通りすがりの男』(1977)などの短編集や『組立てモデル62型』(1968)、『マヌエルの教科書』(1973)などの長編、あるいは『八十世界一日一周』(1967)などのエッセイ集がある。

[木村榮一]

『木村榮一著『神話的コルタサル』(『ラテンアメリカ文学を読む』所収・1980・国書刊行会)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コルタサル」の意味・わかりやすい解説

コルタサル
Cortázar, Julio

[生]1914.8.26. ベルギー,ブリュッセル
[没]1984.2.12. フランス,パリ
アルゼンチンの小説家。多年ヨーロッパで生活し,フランツ・カフカ,ウィリアム・カスバート・フォークナーをはじめとする前衛的な文学を多読しながら豊かな想像力を駆使した作品を発表。『懸賞』 Los premios (1960) ののち,『石蹴り遊び』 Rayuela (1963) では,多面的な解釈の可能な反小説的世界を構築した。ほかに『マヌエルの書』 Libro de Manuel (1973,メディシス賞 ) ,短編集『動物寓意譚』 Bestiario (1951) ,『遊戯の終り』 Final del juego (1956) ,『秘密の武器』 Las armas secretas (1958) ,『クロノピオとファマの物語』 Historias de cronopios y de famas (1962) ,『すべての火は火』 Todos los fuegos el fuego (1966) ,『八面体』 Octaedro (1974) ,『通りすがりの男』 Alguien que anda por ahí (1977) などがある。『悪魔の涎 (よだれ) 』 Las babas del diablo (1958) は,ミケランジェロ・アントニオーニが『欲望』 Blow-upとして映画化 (1966) 。

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百科事典マイペディア 「コルタサル」の意味・わかりやすい解説

コルタサル

アルゼンチンの作家。ベルギーのブリュッセルに生まれ,1918年にアルゼンチンに帰国。1951年からパリに留学し,ユネスコの翻訳官として働く。処女短編集《動物寓意譚》(1951年)はさほど注目されなかったものの,その後《遊戯の終り》(1956年),《秘密の武器》(1958年)などの短編集で,ポーカフカボルヘス等の影響を独自のものへと昇華し,短編作家の名手として確固たる評価を得た。長編では,多義的な読みを可能にした実験的な反小説《石蹴り遊び》(1963年)などを残している。

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