コマッコウ

改訂新版 世界大百科事典 「コマッコウ」の意味・わかりやすい解説

コマッコウ (小抹香)

クジラ亜目マッコウクジラ科コマッコウ属Kogiaに属する哺乳類の総称。コマッコウK.breviceps(英名pygmy sperm whale)とオガワコマッコウK.simus(英名dwarf sperm whale)の2種がある。いずれも温帯から熱帯の海に分布する。前種は体長3.2mで背びれが小さい。後者は2.6mに達し,背びれは高く目だつ。頭部は円柱状で下あごより前に突き出す。マッコウクジラに似て頭骨上面に上顎骨で囲まれた凹所を有し,下あごも細いが,7個の頸椎は全部融合している点はマッコウクジラと異なる。下顎歯は片側で7~16本。上あごにも片側0~3本の歯がある。体色は背面は青黒色で,体側では淡く,腹面は白色である。本種は従来きわめてまれな種類とされてきたが,外洋には少なくないらしい。イルカと異なり群れが小さいうえに,静かに泳ぐので目だたない。餌はおもにイカだが,魚や甲殻類も食べる。コマッコウのほうが外洋性のイカを多く食べており,両種では生息域に若干差があるらしい。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コマッコウ」の意味・わかりやすい解説

コマッコウ
Kogia breviceps; pygmy sperm whale

クジラ目ハクジラ亜目コマッコウ科コマッコウ属。別称ツナビ。体長 2.7~3.4m,最大体重約 400kg。出生体長は 1.2m程度。体色は背部が黒に近い灰色あるいは茶がかった紺色で,体側下面から腹部にかけてはねずみ色あるいは白色である。また眼の後方サメ鰓蓋のような白い模様があり,嘴 (くちばし) がないため,サメのような外観を呈する。体色の個体変異は著しい。頭部は小さく,体長の6分の1程度。噴気孔は1個で,頭部頂上の正中線よりやや左側に位置する。尾柄部は扁平である。体高は体幅の約2倍。背鰭 (せびれ) は体の中央よりやや後方に位置し,小さく,その先端は垂れる。下顎歯は長さ 17mm以下,直径 3mm以下で 12~16対並び上顎にあるくぼみに収まる。上顎には長さ3~10mm,直径 1mmの痕跡歯が数本ある。通常6頭以下の群れで行動する。洋上では,背鰭と背部を水面から出して漂っていることが多く,そのために流木やサメと誤認される。潜水時にしばしば脱糞する。潜水時間は比較的長い。小型の深海性イカ類を捕食すると考えられている。熱帯から温帯の外洋域に生息し,大陸棚斜面およびさらに深い海域に出現する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コマッコウ」の意味・わかりやすい解説

コマッコウ
こまっこう / 小抹香
pygmy sperm whale
[学] Kogia breviceps

哺乳(ほにゅう)綱クジラ目マッコウクジラ科の小形ハクジラ。マッコウクジラの子供の意味ではなく、近縁の別種である。体長3メートル前後で、吻(ふん)はないが、頭部前面が三角形に突出しており、その下面に小さい口があり、細い下顎(かがく)に12~16本の鋭い歯がある。上顎の歯は退化し、歯茎の中に痕跡(こんせき)がある。体は背側が黒く、胸腹部は淡色、その境界はぼかされている。耳孔から細い白帯模様が下顎に向かっている。小さい背びれが中央より後ろに鎌(かま)形をして存在する。世界中の寒海を除く海洋に分布し、ときどき陸にのし上がる。

[西脇昌治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android