コバネガ(読み)こばねが

改訂新版 世界大百科事典 「コバネガ」の意味・わかりやすい解説

コバネガ (小翅蛾)

鱗翅目コバネガ科Micropterigidaeの昆虫総称。すべて昼間活動する微小なガ。鱗翅目のなかでもっとも原始的な形態もち,学者によっては別の目とすることもある。鱗翅目の1亜目としても別の目としても学名Zeuglopteraが使用される。コウモリガ科などと同様に,前・後翅の形と脈相がほぼ等しいばかりでなく,この科だけは大あごが発達していてそしゃく口をもっている。他の鱗翅目の口器は口吻こうふん),あるいは舌と呼ばれる細長い管状の吸収口に進化しているので,コバネガはこの点きわめて原始的といえる。この口器で花粉などを食べる。幼虫ジャゴケゼニゴケなどたい類を食草としている。ヨーロッパ,北アメリカ,オーストラリア,ニュージーランドに分布し,日本ではムモンコバネモンフタオビコバネなど9種が知られている。いずれも山間の湿ったところにすみ,成虫は5~6月に出現する。コハクの中にとじ込められた化石として4000万~5000万年前のものが発見されていることからも,非常に古いタイプのガであることがわかる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コバネガ」の意味・わかりやすい解説

コバネガ
こばねが / 小翅蛾

昆虫綱鱗翅(りんし)目コバネガ科Micropterigidaeの総称。きわめて小形のガ類で、世界に約90種、日本には9種が知られている。成虫は昼間活動性で、低山地から高山帯の日陰または半日陰の下草蘚苔(せんたい)類の上にみられる。晩春から初夏に出現するが、いずれの種も発生期は短い。幼虫は蘚苔類を食べる。一般のガ類の幼虫と異なり、吐糸(とし)管をもっていない。成虫の口器は、大あごがよく発達して機能的であり、ほかのガ類の口吻(こうふん)(舌(した))とはこの点で本質的に異なるばかりでなく、前翅と後翅の脈相がほぼ等しい。あらゆる点からみて、コバネガ科は鱗翅目のなかでもっとも原始的で、祖先型の形質をよく残しており、昆虫の進化を研究するための材料としてきわめて貴重である。鱗翅目を五つの亜目に分類し、各科をそのなかに配列するが、コバネガ科は1科でコバネガ亜目Zeuglopteraを形成する。そしゃくする口をもつガの化石は、1000万年以上前のものが発見されている。

[井上 寛]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コバネガ」の意味・わかりやすい解説

コバネガ
Micropterigidae

鱗翅目コバネガ科の昆虫の総称。翅の開張 10mm内外。鱗翅類中最も原始的な形態をもつ小型のガで,咀嚼型の口器をもつ点でも他のすべての鱗翅類と異なる。昼間飛翔性。幼虫はコケ類を食べ,食草面に営繭する。蛹は大腮をもち,羽化の際これを使って繭を切開する。世界各地に産するが種類は少い。日本産は9種。

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