コショウ(胡椒)(読み)コショウ(英語表記)Piper nigrum; pepper

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コショウ(胡椒)」の意味・わかりやすい解説

コショウ(胡椒)
コショウ
Piper nigrum; pepper

コショウ科常緑多年生つる植物で,南インド原産。高温多湿の熱帯雨林によく育ち,インドネシアなど東南アジアブラジルで広く栽培されている。茎は長さ 5m以上,直径1~2cmに達し,節ごとに根を出して他物にからみついて伸びる。雌雄異株で,通常は3~4月と8~9月に垂れ下がった穂状花序を生じ,多数の白色の小花をつける。果実は直径 5mmぐらいの球形で赤く熟し,強い香気辛みがあって,古くから香辛料に用いられている。成熟前の果実を皮ごとに用いたものが黒胡椒で,また完熟した果実の果皮や果肉を取除いて種子だけから製したものが白胡椒である。いずれも粉末にして料理の香辛料やソーセージ製造用など用途は広い。

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百科事典マイペディア 「コショウ(胡椒)」の意味・わかりやすい解説

コショウ(胡椒)【コショウ】

ペッパーとも。インド原産といわれるコショウ科の常緑性つる植物で,古くから熱帯アジア各地に栽培。茎は木質で,節ごとに出る根で他物にからまり,高さ8mにも達する。葉は革質で濃緑色。雌雄異花だが,時に両性花を生ずる。果実に強い香気と辛味があるので古くから香辛料として貴重視され,中世の西洋では通貨の役を果たしたという。完熟前に果実をとり,その熟度の高いものを発酵,流水にさらし外皮をとって白コショウとし,未熟のものを乾燥し黒コショウとする。白コショウが高級とされるが辛味は黒が強い。ソース,ケチャップなど西洋料理に広く愛用。
→関連項目健胃薬香辛料嗜好作物

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世界大百科事典 第2版 「コショウ(胡椒)」の意味・わかりやすい解説

コショウ【コショウ(胡椒) pepper】

東インド原産のコショウ科の常緑つる植物(イラスト)。その実は最も古くから著名なスパイスの一つで,香辛味のほか防腐効果,食欲増進の効果などがある。古代ローマ時代のヨーロッパでは,シナモンとともに最も珍重され,コショウの粒は同量の銀と等価といわれた。コショウ貿易の利益の独占をめぐって,15世紀からのいわゆる大航海時代には,ヨーロッパ列強の東方進出,植民地争奪戦争などの事件が相次ぎ,世界史をゆり動かす原動力にもなったといわれる。

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世界大百科事典内のコショウ(胡椒)の言及

【香辛料】より

…ただし,薑蒜類としながら蒜(ひる),大蒜(おおひる)などと呼ばれたニンニクやネギは除かれ,これらは別に葷菜(くんさい)類としてまとめられている。その薑蒜類には,辛夷(こぶし),蘭(あららぎ)などいまでは使わぬものや,クルミのようなものも交じっているが,あとはショウガ,サンショウ,ワサビ,からし,タデ,橘皮(たちばなのかわ)といったものが並び,これらにトウガラシとコショウを加えると,おおむね近代以前の日本の香辛料は尽くせることになる。もう一つ〈こにし〉という珍しい名があるが,これは胡荽(こすい),胡と書き,コエンドロの古名である。…

【香料】より

…現代以前の香料は,小アジア,アラビア,東アフリカからインド,スリランカそして東南アジア,中国の西南部にかけての熱帯アジアに産した各種の植物性と若干の動物性の天然香料からなる。そしてそれらは,後に述べるように焚香(ふんこう)料,香辛料,化粧料の三つに大別される。これらの香料は,人類の歴史にあって古くより東西の文化圏に需要され伝播された。したがって主要香料の原産地の究明とその需要・伝播の解明はとりもなおさず東西の文化交渉の歴史を明らかにする手だての一つであろう。…

【中国料理】より

…中華料理とも称される。中国語では料理は〈菜〉と表し,〈菜単〉とはメニューを指す。中国各地方の料理,さらに宗教に由来する〈素菜〉(精進料理),〈清真菜〉(イスラム教徒の料理)などをふくめて中国料理という。
【特色】
 中国料理は世界に類のない長い歴史と普遍性をもった料理である。一般的にどの国の誰が食べてもうまい料理として,フランス料理とともにあげられる。それぞれブルボン朝,明・清王朝などの宮廷料理から発達しており,洗練されつくした国際性の高い料理といわれる。…

【トウガラシ(唐辛子)】より

…第1は1542年(天文11)ポルトガル人が伝えたとするもの(佐藤信淵など),第2は1605年(慶長10)とする説(橘南谿(たちばななんけい)など),第3は秀吉の朝鮮出兵,つまり文禄・慶長の役(1592‐98)の際,種子を持ち帰ったとするもの(貝原益軒など)であるが,どうやら第3説が正しいようである。トウガラシの語が見られるのは《毛吹草》(1638)あたりからであるが,《多聞院日記》文禄2年(1593)2月18日条には,明らかにトウガラシである物がコショウとして記載されている。それは,コショウの種と称する物をもらったというのだが,その種はナスの種のように小さく平らで,赤い袋の中にたくさん入っており,その袋の皮の辛さには肝をつぶしたというのである。…

【肉食】より

… ところで,日本人の多くが肉食を避け,あるいは嫌ってきたことは,香辛料の使い方に大きな影響を与えた。たとえば,コショウは奈良時代以来輸入されていたが,室町時代以後うどんの薬味とされたくらいで,いっこうに用途がひろがらず,トウガラシが伝来するとまもなくその薬味の座をあけ渡してしまった。また,どういう使い方をされたのか不明だが,コエンドロ(コリアンダー)が天皇の食膳に供されるために栽培されていたことが《延喜式》に見えるが,その後はまったく使われた形跡がない。…

※「コショウ(胡椒)」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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