コガネグモ(読み)こがねぐも

改訂新版 世界大百科事典 「コガネグモ」の意味・わかりやすい解説

コガネグモ (黄金蜘蛛)
Argiope amoena

コガネグモ科のクモ。雌は大きく体長20~25mmで,腹部に黄と黒の太い縞模様があるが,雄は小さく5~7mmで黒褐色。北海道を除く日本各地に生息している。しかし最近,都市近郊において数が急激に減少してきた。日本以外では台湾,中国南部,海南島などに分布する。円板状の大きい網を地面に対して垂直に張り,網の中央にX字状のかくれ帯という白い糸をつづり,これに足を2本ずつそろえて静止する。7~8月に成熟し,真夜中に産卵する。一般に200~300個の卵の入った楕円形の卵囊をつくるが,ヒイラギの葉の間につくるときには,この葉に似せた卵囊をつくり,表面を緑の糸で包む。このように,周囲の状況によって卵囊の形と色を変える能力をもっている。鹿児島県加治木町(現,姶良市)には,400年前から今日まで,陰暦端午(たんご)の節句(最近では6月の第3日曜日)にこの雌を使って蜘蛛(くも)合戦を行ってきた。この行事の起りは,武士意気を鼓舞するのが目的といわれているが,現在では町ぐるみの一大行事となって,当日は日本各地からの見物客でにぎわう。近縁種の,ナガコガネグモ,チュウガタコガネグモ,コガタコガネグモ,ナガマルコガネグモ,オオスミコガネグモ,ムシバミコガネグモなどが日本に生息している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コガネグモ」の意味・わかりやすい解説

コガネグモ
Argiope amoena

クモ綱クモ目コガネグモ科。体長は雌 2~2.5cm,雄 0.5cm。胸部背面には白色毛があり,腹部には太い黄色と黒色横縞がある。草間などに円網を張り,中央に X字形の白い隠れ帯をつける。網は明け方に張り,歩脚を 2本ずつそろえて餌を待つ。敵が近づくと網をゆすって威嚇する。本州中部以南に分布し,鹿児島県姶良市では,このクモを用いてクモ合戦という伝統行事が行なわれている。チュウガタコガネグモ A. boesenbergi,ナガコガネグモ A. bruennichii なども本種に類似した形態,習性をもつ。なおコガネグモ科 Argiopidaeは最も多く目にふれる大きな科で,コガネグモ属 Argiope のほかにオニグモ属 Araneus,ゴミグモ属 Cyclosa,トリノフンダマシ属 Cyrtarachne など多数の属種が含まれる。(→クモ類

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コガネグモ」の意味・わかりやすい解説

コガネグモ
こがねぐも / 黄金蜘蛛
[学] Argiope amoena

節足動物門クモ形綱真正クモ目コガネグモ科に属するクモ。平地から山地にかけて普通にみられる夏に出現するクモで、雌は大きく20~25ミリメートルで、腹部の黒色と黄色の幅広い縞(しま)模様が目だつ。雄は小さく5~8ミリメートルで黒褐色。7月ごろが成熟期で、雌は大きい網を張り、中央から四方にジグザグの特別の白い糸をつける。この白い糸はクモの体を隠すのに効果があるとみて「隠れ帯(かくれおび)」とよばれる。本州以南に生息するほか、朝鮮半島、中国に分布する。近縁種にナガコガネグモ、チュウガタコガネグモ、コガタコガネグモなどがある。

 このクモは、田舎(いなか)の子供に古くから親しまれ、戦わせたり、糸をセミとりなどに使う。このクモに相撲(すもう)をとらせる行事が鹿児島県姶良(あいら)市や高知県四万十(しまんと)市で毎年行われる。敵が近づくと網を揺するのでヨコブリグモ、腹部の形が三番叟(さんばそう)の帽子に似ているところからサンバソウグモなどの方言がある。また、地方によってはジョロウグモともよばれるが、真のジョロウグモは別の種である。

[八木沼健夫]


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世界大百科事典(旧版)内のコガネグモの言及

【クモ(蜘蛛)】より

…しかし網を張らないナガイボグモ科,ササグモ科もこれに含まれる。日本にはヒメグモ科,ホラヒメグモ科,サラグモ科,センショウグモ科,ヨリメグモ科,コガネグモ科,カラカラグモ科,アシナガグモ科,ナガイボグモ科,ヒラタグモ科,ホウシグモ科,ウシオグモ科,ミズグモ科,タナグモ科,ハタケグモ科,キシダグモ科,コモリグモ科,ササグモ科など21科がいる。二爪類Dionychaは2個のつめをもつクモで,毛束のあるものが多い。…

※「コガネグモ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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