コウライウグイス(英語表記)Oriolus chinensis; black-naped oriole

改訂新版 世界大百科事典 「コウライウグイス」の意味・わかりやすい解説

コウライウグイス (高麗鶯)
Old World oriole

スズメ目コウライウグイス科Oriolidaeの鳥の総称,またはそのうちの1種を指す。この科は,コウライウグイスOriolus24種とメガネコウライウグイス属Spheccotheres4種の28種からなる。全長20~30cm。中型の森林生の鳥で,美しい黄色の羽毛をもつ種が多く,英名のorioleは,ラテン語のaureolus(黄色または黄金色の意)に由来する。しかし,ヒゴロモOriolus trailliiのように,黄色羽の代りに濃赤紫色の羽毛をもつものもある。コウライウグイス属の大部分の種はアフリカからオーストラリアまでの亜熱帯熱帯に分布する。ふつうは単独かつがいで生活し,樹冠部で昆虫漿果(しようか)をとっている。よく声を出す鳥で,よい声でさえずりもする。樹冠部の小枝の叉状部に枯草,小枝,蘚苔(せんたい)類を材料としてわん型の巣をつくる。メガネコウライウグイス属の4種はティモール,ニューギニア,オーストラリアに分布する。くちばしはコウライウグイス属よりやや大きく湾曲し,特徴として眼の周囲の皮膚が露出している。この属の鳥も樹冠部で生活し,とくに漿果を好み,このため英名をfig bird(イチジク類を好むことによる)ともいう。

 コウライウグイスOriolus chinensis(英名black-naped oriole)は,ヨーロッパのキガシラコウライウグイスO.oriolusとともにこの科の鳥の中ではもっとも北方まで進出している種である。南アジアに広く分布するほか,バイカル湖東部からウスリー・アムール川流域,中国のほとんど全土に生息し,北方で繁殖するものは南方に渡って越冬する。コウライウグイスという和名は,この種が朝鮮半島で繁殖していることによる。中国では黄鳥または強羅鶯と呼ばれて,よく親しまれている鳥の一つ。しばしば絵画にも描かれる。日本では渡りの時期におもに日本海の島々少数観察される。全長約23cm。眼先から後頸(こうけい)部に至る黒帯があり,翼と尾の大部分は黒色,体の他の部分は鮮やかな黄色。全体の羽色は雄のほうが雌より鮮やかで,幼鳥は雌に似て胸腹部には黒色縦斑がある。なお,アメリカでorioleと呼ばれている多くの種は,この科の鳥ではなく,ムクドリモドキ科に属する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コウライウグイス」の意味・わかりやすい解説

コウライウグイス
Oriolus chinensis; black-naped oriole

スズメ目コウライウグイス科。全長 23~27cm。黄色の体に黒色の太いアイマスクをつけたような派手な色彩の鳥。亜種により色彩範囲がやや異なるが,雄は頭部が黄色で,左右に太く黒い過眼線が入り,後頭部でつながっている。背と喉から胸,腹は黄色で,南に分布する鳥ほど色が淡くなる。風切羽は黒色。尾羽は中央が黒く,その先端が黄色。雌は羽色が緑色を帯びる。ミャンマー西部,マレー半島南部,東南アジアフィリピンタイワン(台湾)などでは留鳥で,ベトナム北部から東アジアで繁殖する鳥は,非繁殖期にインドからインドシナ半島に渡る。朗らかな美しい声でさえずる(→さえずり)。ほぼ樹上で暮らし,疎林や農耕地のほか,公園などにもすむ。日本にはごくまれに少数が渡来する。なお,ウグイスとは分類上の類縁はない。ウグイスの漢名としてしばしば用いられる「黄鳥」は,本来本種の名称である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コウライウグイス」の意味・わかりやすい解説

コウライウグイス
こうらいうぐいす / 高麗鶯
oriole
old world oriole

広義には鳥綱スズメ目コウライウグイス科に属する鳥の総称。狭義にはそのうちの1種をさす。この科Orioridaeの仲間は、旧世界の熱帯を中心に生息し、約28種がある。全長約18~30センチメートル。樹上性で昆虫と果実を主食とし、ほとんどの種は常緑樹林に生息する。羽色は黄色を主として黒色部を有するものが多く、オウチョウ(黄鳥)という異名がある。単独またはつがいで生活し、樹上に椀(わん)形か皿形の巣をつくって繁殖する。繁殖生活の詳細はよくわかっていない。温帯にまで進出しているものが2種あり、その1種コウライウグイスOriolus chinensisは迷鳥またはまれな旅鳥として日本でも記録されている。

[浦本昌紀]

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百科事典マイペディア 「コウライウグイス」の意味・わかりやすい解説

コウライウグイス

コウライウグイス科の鳥。翼長16cm。雄は体全体が黄色で過眼線が黒。風切羽と尾羽に黒色がある。東アジアから南アジアにかけて繁殖し,日本へは迷鳥として訪れるが,繁殖の記録がある。朝鮮半島で繁殖していることからその名がついた。中国では黄鳥と呼ばれ,絵画でよく描かれる鳥の一つ。

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