コウホネ(読み)こうほね

改訂新版 世界大百科事典 「コウホネ」の意味・わかりやすい解説

コウホネ (河骨)
yellow pond lily
Nuphar japonicum DC.

池や川に野生し,しばしば庭園などで栽培されるスイレン科の大型多年生水草。夏に鮮黄色の花を咲かせる。根茎は太く白い海綿質で,泥中を長く横にはい,まばらに分枝する。葉は根茎上にらせん状につき,水上葉・水中葉の2型がある。水面より抜き出る水上葉は長卵形,基部はほこ形,全縁である。水中葉はうすい膜質で周囲は波うつ。花は長い花柄上に頂生し,花弁状の萼片は鮮やかな黄色で5枚,花弁は小型で多数。おしべは幅の広い花糸を持ち多数。子房は上位で多室,柱頭は盤状となる。日本全国,朝鮮に分布する。根茎はアルカロイドヌファリジンを多く含み,乾燥させたものは川骨せんこつ)と呼ばれ強壮薬,止血薬として用いられる。コウホネの仲間はアメリカインディアンが根茎,種子葉柄食用にしていたが,コウホネもアイヌが根茎を食べていた記録がある。また花を楽しむだけでなく,アクアリウムでの水中葉も観賞される。

 コウホネの仲間はほかに水上葉が水面に浮かぶヒメコウホネN.subintegerrimum,オグラコウホネN.oguraenseネムロコウホネN.pumilumが日本に分布する。尾瀬に生える柱頭盤が鮮赤色のオゼコウホネN.pumilum var.ozeenseはネムロコウホネの変種とされている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コウホネ」の意味・わかりやすい解説

コウホネ
こうほね / 川骨
[学] Nuphar japonica DC.
Nuphar japonicum DC.

スイレン科(APG分類:スイレン科)の多年生水草。日本各地や朝鮮半島の池や川に生育する。6~9月に黄色の花を開く。庭園などで栽培される例もある。和名は、根茎の色や形が骨に似ているところからつけられた。根茎は白色、海綿質で泥中に横たわる。水上葉は水面から抜き出て、葉身は長卵形、基部は矢じり形になり、長さ20~30センチメートル。浮葉となることもある。水中葉は細長く膜質で縁は波打つ。花は根茎から出る長い花柄上に1個頂生し、径4~5センチメートル。萼片(がくへん)は5枚、花弁状、黄色で宿存する。花弁、雄しべは小形で螺旋(らせん)状に多数つく。子房は上位で多数の室に分かれ、各室の側壁に多数の胚珠(はいしゅ)をつける。コウホネ属の植物は日本に4種生育し、ヒメコウホネN. subintegerrima (Casp.) Makino(N. subintegerrium Makino)は、水上葉が水面に浮かび広円形、長さ6~11センチメートル、花はコウホネに比べ小形で、本州、四国に分布する。

伊藤元巳 2018年6月19日]

薬用

根茎を乾燥すると暗褐色の骨状となるため、漢方では根茎を川骨(せんこつ)と称し、健胃、強壮、止血、浄血剤として産前産後の病、神経衰弱、月経不順、外傷等の治療に用いる。根茎はアルカロイドを含有する。

[長沢元夫 2018年6月19日]

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世界大百科事典(旧版)内のコウホネの言及

【民間薬】より

…これらには苦味作用をはじめ多彩な薬理作用があることが確かめられている。コウホネは小川,池や沼などに自生する水中多年草で,根茎を乾燥したものが浄血,止血の目的で婦人病に用いられる。その有効成分はアルカロイドのヌファリジン,デオキシヌファリジン,ヌファラミンなどとされている。…

※「コウホネ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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