ゲーノ(読み)げーの(英語表記)Jean Guéhenno

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲーノ」の意味・わかりやすい解説

ゲーノ
げーの
Jean Guéhenno
(1890―1978)

フランス作家。貧しい靴屋の子として生まれ、苦学しながら学業を修得し、作家修業に励んだ。第一次世界大戦後、教員生活を続けながら多くの作品を書き、また1929年から36年まで、ロマン・ロラン援助のもとに刊行された雑誌『ウーロップ』Europeの編集長を務めたりした。第二次世界大戦中の42年、対独レジスタンスの組織「作家全国委員会」の創設に協力するなど、その活動の範囲は広い。代表作に「階級闘争」の観点から書かれた『四十男の日記』Journal d'un homme de quarante ans(1934)がある。理論よりも心情を重んずるロマンチックな社会改良主義、人道主義的社会主義の立場を貫く。ほかに人民戦線時代の記録『ある革命日誌Journal d'une révolution(1939。邦訳『ある革命の証言』)、レジスタンス期の記録『暗黒時代の日記』Journal des années noires(1947)など。1962年よりアカデミー・フランセーズ会員。

稲田三吉

『内山敏編訳『深夜の日記』(1951・三一書房)』『山口俊章訳『ある革命の証言――人民戦線を生きて』(1970・二見書房)』『宮ヶ谷徳三・川合清隆訳『ジャン=ジャック・ルソー伝』(『ルソー全集 別巻1』所収・1981・白水社)』『山口三夫訳『偉大な良心』『ジャン・ゲーノ‐ロマン・ロラン往復書簡』(『ロマン・ロラン全集41 書簡9』所収・1982・みすず書房)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ゲーノ」の意味・わかりやすい解説

ゲーノ
Jean Guéhenno
生没年:1890-1980

フランスの作家。貧しい都市労働者の家庭に生まれ,高等師範学校を卒業,ジャン・ジョレス,ロマン・ロランの影響を受け,《ウーロープ》誌の主幹となり,とりわけ,ファシズム台頭期の1930年代から第2次世界大戦期にかけて,文化擁護のために活躍した。民衆の具体的救済のために社会主義に接近しながら,人間の自由と尊厳を圧殺しがちな集団主義には終始反対した。半生回想記である《四十男の日記》(1934),《人間的なものへの回心》(1931),レジスタンス期の記録《暗黒時代の日記》(1946),ルソー論《ジャン・ジャック》(1948-52)などを残した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゲーノ」の意味・わかりやすい解説

ゲーノ
Guéhenno, Jean

[生]1890.3.25. フジェール
[没]1978.9.22. パリ
フランスの評論家。労働者の子に生れ,エコール・ノルマル・シュペリュール (高等師範学校) に学んだ。第1次世界大戦後,大学で教鞭をとるかたわら,文芸批評,社会批評に活躍。鋭敏で広い視野に立つヒューマニスト作家として雑誌『ヨーロッパ』 Europeの編集にたずさわり,常に労働者に同情的であった。 J.ミシュレをたたえた『永遠の福音』L'Évangile éternel (1928) ,戦闘的な『フランスの青春』 Jeunesse de la France (36) のほか,『四十男の日記』 Journal d'un homme de quarante ans (34) など多くの回想がある。

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