ケーラー(英語表記)Köhler, Horst

精選版 日本国語大辞典 「ケーラー」の意味・読み・例文・類語

ケーラー

(Wolfgang Köhler ウォルフガング━) ドイツの心理学者。ゲシュタルト心理学の発展に指導的な役割を果たす。主著「類人猿の知恵試験」「ゲシュタルト心理学」(一八八七‐一九六七

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デジタル大辞泉 「ケーラー」の意味・読み・例文・類語

ケーラー(Wolfgang Köhler)

[1887~1967]ドイツの心理学者。ゲシュタルト心理学派の創始者の一人。その理論の基礎となった類人猿実験で知られる。著「類人猿の知能試験」「ゲシュタルト心理学」など。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケーラー」の意味・わかりやすい解説

ケーラー
Köhler, Horst

[生]1943.2.22. スキエルビエシュフ
ドイツの経済学者,政治家。大統領(在任 2004~10)。2000~04年には国際通貨基金 IMF専務理事を務めた。第2次世界大戦下のポーランドで生まれ,その直後に一家はソビエト連邦軍の侵攻から逃れるためドイツ(のちのドイツ民主共和国東ドイツ〉)に移住した。1953年にドイツ連邦共和国(西ドイツ)側に脱出。西ドイツのテュービンゲン大学で経済学と政治学の博士号を取得した。1969~76年に同大学の応用経済学研究所で助手を務めたのち官僚となる。1981年にキリスト教民主同盟に入党。1990年代初めには,コール政権下で財務省事務次官として,1990年のドイツ再統一(→ドイツ統一問題)に伴う財務計画策定に重要な役割を果たした。だが当時の最大の功績は,ドイツの責任者として,1991年のマーストリヒト条約締結に向けた困難な交渉を成功に導いたことだった。1993年ドイツ貯蓄銀行協会会長に就任。1998年にはヨーロッパ復興開発銀行 EBRD総裁に選ばれた。2000年3月23日に IMF専務理事に就任したが,トップとして基金の旧来の政策に対する数々の批判にさらされた。2001年には,情報収集の効率を高めて金融危機に備えるため,IMF内に国際資本市場局を新設すると発表した。ドイツ連邦会議で保守連合から大統領に選出され,2004年3月に IMF専務理事を辞任,同年 7月ドイツ大統領に就任。2009年に大統領再任を果たした。2010年5月,ラジオ番組のインタビューで,アフガニスタン派兵(→アフガニスタン紛争)など,ドイツの国益を守るため軍事介入が必要な場合もあると発言,批判を招いて,直後に引責辞任した。

ケーラー
Kähler, Martin

[生]1835.1.6. ノイハウゼン
[没]1912.9.7. ハレ
ドイツのプロテスタント神学者。ハレ大学講師 (1860) ,ボン大学助教授 (64) を経て,ハレ大学教授 (67) 。特に J.ベックの影響下に聖書主義的神学を立てた。 F.トールックの感化で信仰復興運動に関心をもち敬虔主義に近づいた。聖書理解における特色は,極端な主観主義と批判研究とに反対し,逐語霊感説にも一線を画して,信仰の確実性を把握しようとしたところにある。史的イエス der historische Jesusと歴史的キリスト der geschichtliche Christusを明確に区別し,現代神学に大きな影響を与えた。彼の弟子のうち代表的学者としては,K.ハイム,J.シュニービントがいる。主著"Das Gewissen I" (78) ,"Die Wissenschaft der christlichen Lehre" (83) ,"Der sogenannte historische Jesus und der geschichtliche biblische Christus" (92) ,"Dogmatische Zeitfragen" (3巻,98~1913) ,"Theologie und Christ" (26) ,"Geschichte der protestantischen Dogmatik im 19. Jahrhundert" (62) 。

ケーラー
Köhler, Wolfgang

[生]1887.1.21. タリン
[没]1967.6.11. ニューハンプシャー,エンフィールド
ドイツの心理学者。ゲッティンゲン大学教授を経てベルリン大学教授,ナチス政権に反対し渡米 (1935) 後はスワースモア大学教授。ゲシュタルト心理学の創始者の一人。第1次世界大戦中,カナリア諸島で類人猿の課題解決に関する独創的な実験を行い,見通し学習を提唱,さらに時間錯誤,図形残効などの実験から,現象と脳過程との同型説を主張するとともに,ゲシュタルト心理学の理論的発展のための重要な著作を発表した。主著『類人猿の知恵試験』 Intelligenzprüfungen an Menschenaffen (1917) ,『ゲシュタルト心理学』 Gestalt Psychology (29) ,『事実の世界における価値の位置』 The Place of Value in a World of Facts (38) 。

ケーラー
Köhler, George J. F.

[生]1946.4.17. ミュンヘン
[没]1995.3.1. フライブルク
ドイツの免疫学者。フライブルク大学で学び,1974年に生物学博士号を取得。ケンブリッジの分子生物学研究所 (1974~76) ,スイスのバーゼル免疫学研究所 (76~84) を経て 84年マックス・プランク研究所免疫生物学長に就任。 75年,C.ミルシュタインとともにリンパ球癌細胞を融合させて単一の抗体 (モノクローナル抗体) を得る方法を開発,多くの病気の診断と治療に道を開いた。ミルシュタイン,免疫学の基礎理論を築いた N.K.ヤーンとともに 84年ノーベル生理学・医学賞を受賞。

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改訂新版 世界大百科事典 「ケーラー」の意味・わかりやすい解説

ケーラー
Wolfgang Köhler
生没年:1887-1967

ドイツの心理学者。1909年ベルリン大学で学位を得た後,フランクフルト大学ウェルトハイマーの助手をつとめ,ゲシュタルト心理学の創始者の一人となった。13年から20年まで大西洋のテネリフェ島で類人猿をはじめとした動物の知能の研究に従事。チンパンジーの問題解決行動から,状況の全体的把握や関係の直観的理解の重要性を見いだし,これを〈見通しEinsicht〉と呼んだ。その成果は《類人猿の知恵試験》(1917)にまとめられた。物理学者M.プランクに学んだケーラーはその豊かな物理学の知識をもとに,20年には物理現象にもゲシュタルト法則が適用しうることを主張し,同時に心理過程と脳の生理過程は同一であるという心理物理同型論を発表。34年アメリカに移るまで,ベルリン学派と呼ばれるゲシュタルト心理学の隆盛な一時期を築いたが,後年は図形残効の研究に力を注ぎ,終生理論家であると同時にすぐれた実験者でもあった。
執筆者:

ケーラー
Martin Kähler
生没年:1835-1912

ドイツのルター派神学者。ハレ大学組織神学教授。ローテR.Rothe,トールック,ミュラーJ.Müller,ベックJ.T.Beck,ホフマンJ.C.K.von Hofmannの影響を受け,さらに信仰覚醒運動の影響も受けて,保守的信条主義とも急進的自由神学とも異なるいわゆる〈調停神学〉の立場に立った。その神学の中心は,宗教改革の根本原理である〈信仰義認〉であって,彼は弁証学の中でこの義認信仰の前提を,教義学の中でその対象を,倫理学の中でその実証を展開した。〈いわゆる史的イエス〉と〈歴史的・聖書的キリスト〉という彼の有名な区別は,信仰と歴史の問題で20世紀神学の先駆的役割を果たした。弟子の中には,ティリヒやシュニーウィントJ.Schniewindがいる。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「ケーラー」の意味・わかりやすい解説

ケーラー

ドイツの心理学者。ゲシュタルト心理学の主唱者の一人。1913年―1920年カナリア諸島の類人猿研究所長,ゲッティンゲン大学,ベルリン大学教授を経て,1934年米国に亡命。主著《類人猿の知恵試験》(1917年)で,チンパンジーが盲目的な試行錯誤によらず,見通しをもつ課題解決の方法を用いることを明らかにした。
→関連項目ウェルトハイマーコフカ

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ピティナ・ピアノ曲事典(作曲者) 「ケーラー」の解説

ケーラー

ドイツの作曲家、ピアノ教師。ピアノをツェルニーに師事。多数の練習曲や指導書で知られる。

出典 (社)全日本ピアノ指導者協会ピティナ・ピアノ曲事典(作曲者)について 情報

世界大百科事典(旧版)内のケーラーの言及

【ゲシュタルト心理学】より

…1912年,ウェルトハイマーは仮現運動に関する実験的研究を発表したが,これがゲシュタルト心理学の誕生であった。ウェルトハイマーと,彼の実験の被験者となったケーラーコフカの3人が,以後,当時の構成主義心理学に対して反駁(はんばく)を行い,この新しい心理学を樹立した。その主張の第1は,心理現象が要素の機械的結合から成るという〈無意味な加算的総和〉の否定である。…

【心理学】より

…W.マクドゥーガルの本能論心理学も,精神の能動性を主張する学派の一つで,精神のあらゆる活動の推進力として生得的な本能を考えた。しかし,行動主義心理学ともっとも激しく対立したのはM.ウェルトハイマー,W.ケーラーらのゲシュタルト心理学であった。彼らは全体は部分の総和以上のものであると主張し,同一刺激が同一反応を引き起こすとする恒常仮定に反対し,連合心理学以来の要素主義,機械論を否定した。…

【知覚】より

… W.ブントやE.B.ティチナーなど構成心理学の人々は,要素的な純粋感覚を仮定し,その総和と,それと連合した心像(以前に経験した感覚の痕跡)を加えたものが知覚であると考えた。しかしM.ウェルトハイマーやW.ケーラーなどゲシュタルト心理学の人々は,知覚を要素的な感覚に分けることは不可能で,むしろ直接的に意識にのぼるのはつねに,あるまとまった知覚であると考えた。例えばウェルトハイマーが1912年に発見した仮現運動の場合は,少し離れた2個の光点が順番に提示されると,静止した別々の光点には見えず一つの光点が動いているという運動印象だけが得られる。…

※「ケーラー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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