ケレス(古代ローマの女神)(読み)けれす(英語表記)Ceres

翻訳|Ceres

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ケレス(古代ローマの女神)
けれす
Ceres

古代ローマの古い穀類の女神。今日知られる限りでは、ローマ固有の祭祀(さいし)をもつこの女神の聖所は確認されていない。つまり、ケレス崇拝は完全にギリシア的であり、ギリシアの影響によって成立したといわれる。紀元前496年にギリシアのデメテルディオニソスの宗教がローマに移入され、さらにその3年後、初めてケレスの神殿がアウェンティヌスの丘に奉献されると、ローマ古来の女神の姿は失われ、今日知られているようなデメテルと同一視されたケレス崇拝ができあがった。

 またそれまでローマの諸神殿はエトルリア人の方式を手本としてきたが、ここに初めてギリシア様式およびギリシアの絵画や彫像による装飾が用いられたという。デメテルなどの穀類や酒の神々が迎え入れられたのは、ローマがエトルリアとの戦争により国土が疲弊し、飢饉(ききん)に襲われたからで、このことから、ケレスは大地母神と類似した性格をもっていたことが知られる。ケレスの祝祭はケレアリアCerealiaとよばれ、4月19日がその祭日であった。

[伊藤照夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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