ケリ(英語表記)grey-headed lapwing
Microsarcops cinereus

改訂新版 世界大百科事典 「ケリ」の意味・わかりやすい解説

ケリ
grey-headed lapwing
Microsarcops cinereus

長い脚をもつ大型のチドリ目チドリ科の鳥。鳴声からその名がついたといわれる。モンゴル,中国東北部,日本で繁殖し,冬には中国南部,東南アジア,フィリピンなどに渡るものもいる。日本では本州で繁殖し,本州中部以南で越冬する。水田,河原,草原などにすむ。全長約35.5cm。くちばしは短くて黄色,先が黒い。頭部,胸は暗灰青色,体の上面は灰褐色。尾は白くて先に黒斑がある。翼の先は黒く,基半部は白色と灰褐色であるので飛ぶと目立つ。腹部は白く,胸部との境に黒帯がある。脚は長くて黄色。東北地方,中部地方,近畿地方で繁殖し,本州中部以南で越冬する。草原,水田,干拓地,川岸などにすみ,秋冬には数十羽の群れをつくることもある。餌をとっては少し歩き,また餌をとっては歩くという動作をゆっくりと繰り返している。ケリッ,キリッという鋭い声を発する。草原の地上,水田中の少し高くなったところ,あぜなどに枯草を敷いて皿形の巣をつくり,1腹4個の卵を産む。産卵期は3~5月。雌雄とも抱卵し,抱卵日数は27~30日。雛は綿羽に覆われ,かえってまもなく巣を離れる。親鳥は巣の近くや雛に人,イヌカラスなどが近づくと,上空から鳴きながら急降下して威嚇する。また,翼を垂らし,尾を広げて擬傷動作を行う。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケリ」の意味・わかりやすい解説

ケリ
Vanellus cinereus; grey-headed lapwing

チドリ目チドリ科。全長 34~37cm。頭部から頸部は灰色で下胸部に黒い横帯がある。背,肩羽,上雨覆の一部は灰褐色。初列風切と初列雨覆は黒く,上面のほかの部分は白い。尾は白く,先端部に黒色横帯がある。腹から下雨覆も白い。地上にいるときにはこれらの羽色のパターンはあまり目立たないが,飛ぶと翼の先端部が大きな黒い三角形に見えるだけでなく,白,黒,褐色のコントラストがはっきりして美しくみごとである。は先が黒く,ほかの部分は黄色。眼のまわりの皮膚も黄色で,上嘴基部近くに小さな黄色い肉質の斑がある。脚はやや長く,淡い緑色を帯びた黄色。中国北東部と日本に繁殖分布し,ほとんどは中国南部や東南アジアに渡って越冬する。日本の繁殖地は本州の北部と中部で,南部以南には越冬する鳥もいる。早春に比較的広い畑地,河原の草地,水田の刈り跡などの地上に営巣する。農作業が始まると巣が壊されてしまうことも少なくない。

ケリ
Kheri

インド北部,ウッタルプラデーシュ州中北部の町。ラクノーの北約 120kmに位置。 5km北方のラキムプルと事実上連続している。周辺には,開析された台地とシバーリク山脈から流れる諸河川沿いの沖積地が分布,綿花,米,コムギ,豆類,畜産品を産する。ほかに製糖が盛ん。人口約2万。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケリ」の意味・わかりやすい解説

ケリ
けり / 鳧
grey-headed lapwing
[学] Microsarcops cinereus

鳥綱チドリ目チドリ科の鳥。全長35.5センチメートル。温帯アジアの極東部、南部シベリア、モンゴル、中国、日本などで繁殖し、冬には東南アジアへも渡る。日本では本州の各地で繁殖しているが、局地的である。西日本では越冬するものも少なくない。頭から胸にかけては灰色を呈し、上面は灰褐色。下面は白色で、胸には黒色の帯がある。嘴(くちばし)は黄色で先端は黒色。長めの足は黄色。飛ぶと初列風切(かざきり)の黒色と、雨覆(あまおおい)と次列風切の白色との対照が鮮やかである。キリッ、キリッと鋭く鳴くのが和名の由来とされる。河川や水田、海岸の干潟に生息し、昆虫や幼虫、ミミズ、ヒルなどのほか、イネ科の雑草の種子も食べる。巣は水田のあぜや荒れ地のへこみにつくり、普通4卵を産む。

[柳澤紀夫]


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百科事典マイペディア 「ケリ」の意味・わかりやすい解説

ケリ

チドリ科の鳥。翼長23cm。頭部は灰色,背は灰褐色。中国北部,日本で繁殖し,冬はインドシナ半島,フィリピン等にも渡る。日本では本州中部以北の一部で繁殖する。北部のものは冬は暖地へ移動。低地の草原や水田跡に営巣し,3〜4卵を産む。巣に敵が近づくと上空からキキッ,キキッと鋭く鳴きながら急降下して威嚇する。
→関連項目チドリ(千鳥)

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デジタル大辞泉プラス 「ケリ」の解説

ケリ

北海道で生産される工芸品。鮭の皮で作ったアイヌ伝統のブーツのような履物。「チェブケリ」「チェプケリ」ともいう(“チェブ”また“チェプ”はアイヌ語で「魚」の意)。

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