精選版 日本国語大辞典 「ケラー」の意味・読み・例文・類語
ケラー
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スイスのドイツ語作家。チューリヒのろくろ職人の息子として生まれたが,5歳の時父を事故で失い,以後妹と共に母の手ひとつで育てられる。小学校を出て実業学校へ進んだが,1834年にささいな事件で退学処分を受け,それから画家になろうと修業を始めた。40年から2年間ミュンヘンに留学したが,結局十分な成果が得られず失意のうちに帰郷し,画業は諦め文学の道に進む。この波乱に富んだ生い立ちは,後に,母への感謝と悔恨の気持をこめて,自伝的長編小説《緑のハインリヒDer grüne Heinrich》(1854-55)にまとめられた。
文学に転身したケラーは,まず詩人を志し,恋愛詩や政治詩を書いて認められ,《詩集》(1846)を出した。政治詩には,当時チューリヒに亡命していた急進的詩人ヘルウェークやフライリヒラートの影響があり,また当時スイスを二分していたプロテスタント諸州とカトリック諸州との抗争に積極的関心を示し,プロテスタント義勇軍に2度も参加している。1848年にチューリヒ州の奨学金を得て,ドイツのハイデルベルクに留学,ここで無神論の哲学者フォイエルバハの講義を聴き,決定的影響を受けた。50年にベルリンに移り,ここに5年間滞在,苦しい生活を送りながら,少年の人間形成の過程を描く教養小説《緑のハインリヒ》や,スイス人の生活をユーモアをこめて批判的に扱った短編集《ゼルトウィーラの人々》(第1巻1856,第2巻1874)を執筆。61年にチューリヒ州政府第一書記に選ばれ,以後15年間在任,その間はもっぱら政治生活に専念する。退職後文筆生活に戻り,故郷の歴史に取材した《チューリヒ短編小説集》(1878-79),《緑のハインリヒ》の改作(1879-80),恋愛小説集《寓意詩》(1882),時代批判的な長編小説《マルティン・ザーランダー》(1886)をやつぎばやに発表し,ドイツ語リアリズム文学の最高峰と目されるに至った。
執筆者:石井 不二雄
アメリカの女流著述家,社会事業家。アラバマ生れ。2歳時の疾病によって盲,ろう,啞の三重障害者となったが,家庭教師であるアン・サリバンAnne Sullivan Macy(1866-1936)の献身的努力と本人の不屈の自立精神で障害を克服。パーキンス盲学校を経て,ラドクリフ女子大学を1904年に優等で卒業。その後,アメリカ,ヨーロッパ,アジアに講演旅行。それによって集まった基金を,盲その他の障害者の訓練・教育事業のために投じた。その社会的貢献に対してテンプル大学より31年に人文博士,グラスゴー大学より32年に法学博士の称号が授与された。37年以来再三訪日し,それを記念してヘレンケラー協会が設立され,日本の戦後の盲人を含む障害者福祉の発展に大きな影響を与えた。著書は《私の生涯》(1903),《私の住む世界》(1908),《私の宗教》(1940)など多数。
執筆者:小島 蓉子
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…ボルティモアの慈善組織化協会に事務員として勤務する中で社会事業に興味をもち,協会が行っていた友愛訪問が,道徳的基準によって対象をふるいわけている方法に疑問を感じ,科学的処遇技術としてのソーシャル・ケースワーク(個別的処遇技術)を体系化した。リッチモンドのケースワーク論は,家庭教師アン・サリバンAnne Sulliven Macyが障害児ヘレン・ケラーに対して行った社会環境を利用して人格の発展を図る教育方法に学んだところから環境決定論的といわれ,心理主義的な立場にたつケースワーク論に対比される。代表的な著書に《社会診断》(1917)および,《ソーシャル・ケースワークとは何か》(1922)がある。…
※「ケラー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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