ケマンソウ(読み)けまんそう

改訂新版 世界大百科事典 「ケマンソウ」の意味・わかりやすい解説

ケマンソウ (華鬘草)
bleeding heart
Dicentra spectabilis(L.)Lem.

中国原産のケシ科多年草。昔より庭園によく植えられ楽しまれる宿根草で,15世紀ころすでに渡来していたといわれる。一名,フジボタンタイツリソウヨウラクボタンというが,いずれも,小花を垂れ下げて咲くその姿や葉の形から名付けられたものであろう。円筒状の茎を出して叢生(そうせい)し,灰緑色の数回羽状複葉を茂らせる。4~5月ころ,心臓形をした桃紅色の扁平な小花を偏側する総状花序に垂れ下げて咲かせる。冬は茎葉は枯れ,根株で越冬をする。根にはアルカロイドのプロトピンprotopineなどを含み,薬用植物としても扱われる。栽培は排水よく保湿性のある所が適し,半陰地でも育つが,日当りのよい所の方が花つきもよい。植え時は3~4月。繁殖株分けによる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケマンソウ」の意味・わかりやすい解説

ケマンソウ
けまんそう / 華鬘草
[学] Lamprocapnos spectabilis (L.) Fukuhara
Dicentra spectabilis DC.

ケシ科(APG分類:ケシ科)の多年草。中国原産で、日本では古くから庭園や鉢植えとして観賞されている。草丈は30~60センチメートル。葉は灰緑色、2、3回全裂する羽状複葉で、小葉はくさび形で粗い鋸歯(きょし)がある。4~5月、花茎の先に鮮桃色、扁平(へんぺい)で心臓形、長さ約3センチメートルの花を総状に下垂してつける。白花の品種もある。花が茎の先に下垂して開く姿からタイツリソウ、葉がボタンに似て、花がフジに似ているところからフジボタンの別名もある。近縁種に、北アメリカ原産で、草丈が低く30センチメートルほどのハナケマンソウ、日本の高山に自生するコマクサがある。

 栽培は、排水のよい肥沃(ひよく)な土地で、夏は半日陰になる所がよい。耐寒性は強いので露地で越冬する。繁殖は、秋または早春に根分けするか、花期後にわき芽を挿芽する。

[神田敬二 2020年2月17日]


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百科事典マイペディア 「ケマンソウ」の意味・わかりやすい解説

ケマンソウ

フジボタン,ヨウラクボタン,タイツリソウなどの別名がある。朝鮮半島,中国北部原産のケシ科の多年草。草たけは30〜50cmで全草は緑白色を帯びる。2回3出の複葉で,小葉には切れ込みがある。4〜5月,斜め横に伸びた花序にコマクサに似た桃色の花が10〜15輪1列につり下がって咲く。観賞用に古くから庭園で栽培。早春に株分けでふやす。名は花を仏具の華鬘に見たてていう。
→関連項目コマクサ

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