日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケベック(市)」の意味・わかりやすい解説
ケベック(市)
けべっく
Québec
カナダ、ケベック州の州都。人口16万9076、大都市域人口68万2757(2001)。セント・ローレンス川下流の北岸に位置し、先住民(インディアン)のことばで「川の狭くなったところ」を意味する。市の中心部は標高100メートルのダイヤモンド岬上にあり、北アメリカ大陸に残る唯一の城壁都市である。商・工業地区、住宅地区などは低地にある。1608年にフランスの植民地としてシャンプランが開拓して以来フランス系文化の中心地で、現在でも市民の92%はフランス系である。1663年にフランスの植民地ニュー・フランスの首都となり、1791年ロワー・カナダの首都となった。1841~67年はカナダの首都であった。大西洋横断の巨船が出入する良港をもち、穀物、木材、家畜が輸出される。鉄道の起点でもあり、五大湖地方とは水路で直結され、近代都市として発達している。道幅が狭く、ヨーロッパ都市を思わせる古風な町並みは観光地としても有名で、イギリス・フランス植民地戦争の主戦場であったため、歴史的遺跡も多い。1985年にケベックの歴史地区は世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。1647年建設の教会堂、1823~32年建設の城塞(じょうさい)、フロンテナック城(現在はホテル)などが知られている。1852年創立のラバル大学はカトリック系大学として名高く、フランス語が用いられている。
[山下脩二]