ケバエ

改訂新版 世界大百科事典 「ケバエ」の意味・わかりやすい解説

ケバエ

双翅目ケバエ科Bibionidaeに属する昆虫総称。アメリカでは,本科の1種Bibio albipennisが3月に多数発生するのでMarch flyという。日本でも,多くの種は,春4~5月に出現する。成虫の脚は細長く,雄の複眼は左右が接する。触角は8~16節で太く,短い。翅は幅広く,大きい。体と脚に小剛毛が密生しているのでこの名がある。幼虫は牧場の堆肥下,森林内の落葉下,朽木の中などで群生し,腐植質や動物の糞などを食べる。植物の根を食べ,作物害虫となる種もある。頭部は大きく,よく発達した口器をもち,脚がない。多くの種は,森林内に生息し,春先に群飛するのが観察される。世界で約400種が記録されている。日本からは,Bibio属など5属36種が知られている。このうちメスアカケバエヒメセアカケバエハグロケバエなどがふつうである。ハグロケバエBibio tenebrosusの幼虫は,集団越冬し,不気味なので〈地獄虫〉と呼ぶ地方もある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケバエ」の意味・わかりやすい解説

ケバエ
Bibionidae; March fly

双翅目ケバエ科に属する昆虫の総称。小型ないし中型のハエで体は黒色または赤褐色で,毛が多い。雌雄で大きさ,体形,色彩などの差が著しいものが少くない。雄の複眼は大きく,前額で左右相接するが,雌では小さく,幅広く離れている。触角は短くじゅず状。翅は大きく,透明または暗色で,顕著な縁紋をもつものが多い。後肢は長く,腿節の肥大した種が少くない。幼虫は発達した口器をそなえた大きな頭部をもつ無脚の蛆 (うじ) で,土中などに群生し,腐敗植物質や根,馬糞などを食べる。雄は肢を下方に伸ばし,ゆるやかに漂うように飛び,しばしば群飛する。本科のメスアカケバエ Bibio rufiventris体長が雄 8mm,雌 10mm内外。雄は全体に黒色で光沢があり,春季群飛する。雌は中胸背と腹部が淡赤褐色。日本各地,ユーラシア大陸に広く分布する。また雌雄とも黒色の大型種ハグロケバエ B. tenebrosusが本州以南,アジア各地に,全体が黒色で胸部背面のみ黄赤色のヒメセアカケバエ Penthetria japonicaが日本全土に分布する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケバエ」の意味・わかりやすい解説

ケバエ
けばえ / 毛蠅

昆虫綱双翅(そうし)目糸角亜目原カ群の1科の総称。実はハエではなく、双翅目のうちもっとも原始的なカの仲間なのでフルカ古蚊)と改称された。

[伊藤修四郎]

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