精選版 日本国語大辞典 「グライダー」の意味・読み・例文・類語
グライダー
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翻訳|glider
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滑空機とも呼ばれる。飛行機のように固定翼をもつが,推進のための動力はもたず,上昇気流を利用して上昇したり,長距離を滑空する航空機。小型のエンジンと推進器をもち,自力で離陸,上昇し,空中でエンジンを止めて滑空を行うものはモーターグライダーmotor gliderという。
固定翼をつけた航空機は,前進することで翼に働く空気力を利用して空中に浮くことができるが,この空気力のうち,進行方向に垂直上向きに働く力を揚力,進行方向に平行で後向きに働く力を抗力と呼ぶ。定常飛行では揚力は重力とつり合い,推進器を備えた飛行機では,水平飛行ができて推力と抗力とがつり合う。グライダーは通常推進器をもたず,したがって無風時での定常水平飛行はできないが,前進しながら降下するという定常降下飛行は可能で,これを滑空と呼ぶ。また滑空時に飛行経路が水平面となす角を滑空角glide angleまたは降下角と呼ぶ。ある高度Hから滑空して進んだ水平飛行距離Xとの比H/Xが滑空角の正接で,その逆数X/Hを滑空比glide ratioといい,その値は揚力Lと抗力Dとの比,いわゆる揚抗比L/Dに等しい。滑空時には,重力の余弦が揚力と,そして正弦が抗力とつり合っている。つまり滑空機の推力は重力の進行方向成分から得られている。ある高度から,どこまで滑空できるかは,したがって揚抗比に左右され,例えばこの値が30であれば,1kmの高度から滑空に入ると,無風時でも30kmの距離まで滑空することが可能である。
グライダーは模型機では早くから研究されていたようであるが,その中で有名なのはG.ケーリーによるもので,1804年,主翼のほかに,安定のための水平,垂直の両尾翼がついた模型グライダーによる滑空実験を行ったといわれている。有人機での実験に成功し,今でも高い評価を得ているのはオットーとグスタフのリリエンタール兄弟である。彼らの鳥をまねて作った機体は,現在ハンググライダーと呼ばれる人がぶら下がる形式のもので,62年から徐々に改良を重ねていき,ついに高さ約50mの丘から斜面を利用して数百mは滑空できるものに仕上げた。O.リリエンタールの墜落死(1896)以後,何人かの後継者がグライダーの改良を続けたが,その中の一人であるアメリカの鉄道技師シャヌートOctave Chanute(1832-1910)は,複葉のグライダーを製作し,1000回を超える滑空に成功したうえ,飛行機械についての本も出版した。多くの彼への問合せの手紙の中には,ライト兄弟の兄ウィルバーのものもあり,ライト兄弟はシャヌートを師とし,彼らなりにも滑空実験を行った後,1903年12月17日の飛行機による初飛行に成功したのである。飛行機の発達によってグライダーは一時期忘れられた存在となったが,第1次世界大戦後飛行機の製造が制限されたドイツでは,グライダーの研究が盛んとなり,これが契機となってスポーツとしてのグライダーが世界的に普及した。第2次世界大戦では兵員,軍事,物資の輸送用に大型のグライダーも開発されたが,戦後は再びスポーツとしてのグライダーがもっぱらである。
なお,かつてはグライダーの操縦訓練において,ごく初歩の訓練用のプライマリーprimary,中級訓練用のセコンダリーsecondaryと呼ばれる機体での訓練を経て,揚抗比が30を超すような高性能のソアラーsoarerに進むという3段階がとられていたが,現在では初歩からソアラーの複座機で訓練が行われており,プライマリー,セコンダリーは姿を消している。
原理のところで述べたように,グライダーでは揚抗比が大きくなるほど遠くまで飛行することができる。揚抗比を高めるには,胴体をむだな突起物の少ない流線形として抵抗を減らすことも重要であるが,翼弦に対して翼幅の大きい細長い翼,すなわちアスペクト比の大きい翼とすることで大きな効果が得られる。これはアスペクト比の大きい細長い翼は,翼端から出る渦による空気抵抗が小さいためで,通常グライダーではこの値は15~30である。グライダーではこのようにアスペクト比が大きい翼が必要で,しかも表面仕上げが良好な流線形が要求されるため,製作のしやすさから機体材料として早くから複合材料が採用された。今後,繊維強化プラスチックなどの新しい複合材料の使用が増えるにつれて軽量化が進み,また剛性も増すので,記録も伸びるとともに,高度な曲技飛行も可能になると思われる。
グライダーは風があると実際の対地滑空角が変わってくる。とくに上昇気流がある場合には,降下速度がその分だけ減るので,滑空距離や耐空時間が延びる。上昇気流は,市街地や畑地の上空に見られる熱気泡,山の風上側斜面に見られる斜面上昇風,山の風下側に生ずる山岳波,寒冷・温暖前線の暖空気の側に見られる前線上昇風などに存在し,これらの上昇気流をうまくつかまえて利用することが,グライダーの長距離滑空では重要になる。
グライダーの発進には,かつてはゴムの索を用いてパチンコ式に打ち出す方法もあったが,現在多く使われているのは,自動車や飛行機によってロープで引いてもらうか,ウィンチでロープを巻きとってもらう方式である。いずれもある高度まで達した後はロープをはずし,滑空に移る。また小型のエンジンと推進器を備えているモーターグライダーでは離陸は自力で行う。
執筆者:東 昭
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…帆船は船員の訓練に使用されており,日本では運輸省所属の〈日本丸〉が活躍している。
[グライダー,航空機]
18世紀から19世紀にかけて盛んに試みられたものに自由気球があり,現在では熱気球による太平洋横断などが試みられている。第2次大戦中には偏西風を利用した風船爆弾が日本からアメリカ大陸に向けて数多く飛ばされた。…
…グライダーを操縦して,滑空距離や滑空速度を競い合う空のスポーツ。第1次世界大戦後,動力付きの飛行機の製造を禁止されたドイツで盛んになり,欧米各国にも広がった。…
※「グライダー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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