グアニジン(英語表記)guanidine

デジタル大辞泉 「グアニジン」の意味・読み・例文・類語

グアニジン(guanidine)

HN=C(NH22示性式で表される有機化合物潮解性のある無色結晶で、強い塩基性をもつ。火薬・樹脂・医薬品などの原料として用いられる。イミノ尿素。→グアニジノ基

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改訂新版 世界大百科事典 「グアニジン」の意味・わかりやすい解説

グアニジン
guanidine

イミノ尿素iminourea,カルバミジンcarbamidineともいう。化学式HN=C(NH22。無色の潮解性結晶。融点約50℃。グアノguano(海鳥糞(ふん))の成分の研究中に発見(シュトレッカーA.Strecker,1861)された物質で,天然には,カブ,マッシュルームトウモロコシ,米ぬか,ミミズなどに含まれる。また,人尿中にも微量含まれ,尿毒症の際には数倍になるので,尿毒症の一因と考えられている。グアニジンの構造は,アミノ酸の一つであるアルギニン,核酸塩基のグアニン,ビタミン複合体の葉酸,抗生物質のストレプトマイシンなどに含まれる。

 グアニジンは強い塩基(塩基解離指数pKb≅0.4)である。これは共役酸であるグアニジウムイオンが,次のような共鳴によって著しく安定化されるためである。



このため,いろいろな酸と塩(グアニジウム塩)を作る。たとえば,空気中では二酸化炭素を吸収して炭酸塩(CH5N32・H2CO3(融点197℃)を生成する。グアニジンは,通常はグアニジウム塩として合成される。たとえば,ジシアンジアミド硝酸アンモニウムアンモニアの存在下に160℃で融解して硝酸塩が作られる。

遊離のグアニジンは,グアニジウム塩に強アルカリを作用させることによって得る。工業的には,医薬品,農薬,爆薬(ニトログアニジン),紙質改良剤,繊維処理加工剤などの原料,中間体として使われる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「グアニジン」の意味・わかりやすい解説

グアニジン
ぐあにじん
guanidine

尿素誘導体の一つ。非常に強い有機塩基である。イミノ尿素ともいう。潮解性の無色の結晶。水、エタノールエチルアルコール)に溶けやすい。天然には、サトウダイコンやカブの汁液、キノコ類などに少量存在する。ジシアンジアミドと硝酸アンモニウムとを加熱することにより硝酸塩として得られる。チオシアン酸アンモニウムから合成する方法もある。空気中から二酸化炭素を吸収しやすい。160℃に加熱すると、アンモニアを放ちメラミンC3H6N6になる。硝酸塩は火薬の原料として、また塩酸塩は医薬品や染料の合成原料として用いられる。なお、人尿の中にも微量含まれており、尿毒症のときには量が増大するので、尿毒症の一因とも考えられている。

[山本 学]

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化学辞典 第2版 「グアニジン」の解説

グアニジン
グアニジン
guanidine

carbamidine,iminourea.CH5N3(59.07).HN=C(NH2)2.チューリップ,キノコ,トウモロコシの胚,貝類などに含まれる.チオシアン酸アンモニウムを180 ℃ に加熱するか,クロロピクリンまたはオルト炭酸エチルにアンモニアを作用させるか,またはシアナミドにアンモニアを付加すると得られる.無色,吸湿性の結晶状粉末.融点約50 ℃.1.25.pKa1 13.65.pKa2 -11.0(25 ℃).水,エタノールに易溶.塩基性が強く,空気中では二酸化炭素を吸収する.炭素塩は融点197 ℃.160 ℃ でアンモニアを放出してメラミンになる.密栓して貯蔵する.一種の筋肉毒で,神経末端を興奮させ,またカルシウムのきっ抗剤として作用する.LD50 500 mg/kg(ウサギ,経口).[CAS 113-00-8]

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百科事典マイペディア 「グアニジン」の意味・わかりやすい解説

グアニジン

化学式はHN=C(NH22。イミノ尿素,カルバミジンとも。塩基性の強い無色,潮解性の結晶。融点約50℃。水,エタノールに易溶。火薬,医薬,染料,界面活性剤添加剤などに利用。ジシアンジアミドと硝酸アンモニウムを加熱すると硝酸塩が得られる。

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栄養・生化学辞典 「グアニジン」の解説

グアニジン

 CH5N3 (mw59.07).(NH2)2CNH.塩酸塩をタンパク質の変性,溶解,抽出などに用いる.

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