クーン=ローブ財閥(読み)クーンローブざいばつ

改訂新版 世界大百科事典 「クーン=ローブ財閥」の意味・わかりやすい解説

クーン=ローブ財閥 (クーンローブざいばつ)

19世紀末から20世紀前半にかけて,モルガン財閥と並び,投資銀行(インベストメント・バンク)であるクーン=ローブ商会Kuhn-Loeb & Co.を通じ,大きな金融支配力を示したアメリカの金融財閥。アメリカの投資銀行は成立ちにより大きく3グループに分けられるが,クーン=ローブは,そのうちドイツ系ユダヤ人移民を始祖とするものの代表格である。起源はクーンAbraham KuhnとローブSolomon Loebという義兄弟が営んでいた雑貨店(1850ころ創業)にさかのぼるが,クーン=ローブ商会の投資銀行としての名を高からしめたのは,1875年以降パートナーに加わったローブの女婿シフJacob H.Schiffの働きによる。同商会は,当時の鉄道ブームのなかで,もっぱら鉄道債券の引受け・分売のリーダーにのしあがり,ユニオン・パシフィック鉄道支配をめぐりモルガン商会と争ったことは歴史上よく知られている事件である。20世紀に入って同商会は,鉄道債券専門から外国政府および企業の資金調達証券の引受け)に主力が移っていったが,1929年の大恐慌などで打撃を受け,クーン=ローブ財閥もその支配力を失っていった。第2次大戦後,とくに60年代以降はメリル・リンチ社等の新興勢力に押され,証券引受業者としての地位が徐々に低下,ウォール街を吹き荒れた証券業者合併の嵐のなかで,77年12月,同じドイツ・ユダヤ系の投資銀行の名門レーマン・ブラザーズ社と合併,レーマン・ブラザーズ・クーン・ローブ社Lehman Brothers Kuhn Loeb Inc.となった。この合併はレーマン主導のもので,旧クーン=ローブのパートナーの多くは同社を去った。なお新会社は現在,業界の準大手である。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「クーン=ローブ財閥」の意味・わかりやすい解説

クーン=ローブ財閥【クーンローブざいばつ】

1867年ユダヤ系ドイツ人のS.クーンとA.ローブが開いたKuhn-Loeb & Co.を通じ,19世紀末―20世紀前半にモルガン財閥に次ぐ支配力を示した米国の金融財閥。ユニオン・パシフィック,ペンシルベニア両鉄道など鉄道業中心に,産業会社にも支配力を拡大。鉄道斜陽化その他のため昔日の面影は全く失った。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android