クワイ(読み)くわい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クワイ」の意味・わかりやすい解説

クワイ
くわい / 慈姑
[学] Sagittaria trifolia L. 'Caerulea'
Sagittaria trifolia L. var. edulis (Sieb.) Ohwi

オモダカ科(APG分類:オモダカ科)の多年草。オモダカの変種。中国原産で、日本や中国では塊茎食用とするために水田で栽培される。欧米では観賞用とする。草丈は高さ1メートルに達し、葉身は三角形の矢じり形で長さ30~40センチメートル、葉柄は50~70センチメートルで、基部が広く鞘(さや)状になる。秋、まれに葉心から花茎を出し、白色の3弁花を輪生する。花茎の上部に雄花、下部に雌花をつける。泥中に地下茎を伸ばし、秋にその先端に球状の塊茎をつける。塊茎は直径1.5~4センチメートルで、オモダカより大型。春から夏に塊茎を水田に植え付け、生育に伴って追肥、消毒、除草などの管理をする。地上部が枯れた秋から翌春までの間に掘り取る。塊茎の肌は青色で肉質がよく、苦味の少ない青クワイが中心的な品種で、新田(しんでん)クワイ、京クワイなどともよばれる。日本では10世紀にすでに栽培され、現在は広島県福山市や埼玉県南部が主産地である。

 中国では白クワイも栽培されるが、品質が劣り、日本では栽培されていない。

[星川清親 2018年9月19日]

食品

塊茎には翌春伸びる芽が出ているので、「芽が出る、めでたい」にかけて、縁起物の野菜とされ、正月料理としての利用が多い。肉質がよく、甘味とほろ苦さがある。甘く煮含めたり、きんとんなどにする。あくが強いので、皮をむいて水にさらし、ゆでてから料理する。くわい煎餅(せんべい)は、皮をむいたクワイを1ミリメートルほどの厚さの輪切りにして水にさらし、水をきってしばらく陰干ししてから油で揚げたもので、塩味で食べる。また、皮をむいてすりおろし、卵と小麦粉で練り、団子にしたり、のりで包んだりして揚げるのもよい。

 中国料理に使われるしゃきしゃきとしたクワイはカヤツリグサ科(APG分類:カヤツリグサ科)のオオクログワイで、本種とは別物である。

[星川清親 2018年9月19日]


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食の医学館 「クワイ」の解説

クワイ

《栄養と働き&調理のポイント》


 中国が原産地のクワイには、おもに3種類があります。
 わが国の主要品種である直径約5cmのアイクワイ、中国で栽培されるシロクワイ、大阪吹田(すいた)で栽培されるスイタクワイの3種です。
 中国料理でよく用いられる食材にオオクログワイがありますが、これはカヤツリグサ科のもので、オモダカ科のクワイとは別科のものです。
 クワイは多年生の水性植物で、地下にできる塊状の茎を食用にします。旬(しゅん)は冬から初春にかけてで、芽がでていることから目出たい野菜とされ、正月料理に縁起物としてよく用いられます。
○栄養成分としての働き
 栄養面での特徴は、カリウムが豊富に含まれていることがあげられます。カリウムを多くとると、塩分に含まれているナトリウムが排泄(はいせつ)され、高血圧を予防することができます。味はユリネに似ていて、ゆでるとホクホクとした食感になります。
 アクが強く、すぐに色が悪くなるので、酢をたらした湯や米の研ぎ汁で下ゆでしてから調理します。「芽がでる」縁起物として正月料理に欠かせませんが、このときは、芽の部分をこわさないようにていねいに扱います。含め煮が一般的ですが、生のクワイをすりおろして小麦粉と混ぜ、揚げ衣に使ったり、うすく切って水にさらし、素揚げにするとおいしく食べられます。
 購入する際は、つやがよく、芽の部分がまっすぐ伸び、しっかりしているものを選びましょう。

出典 小学館食の医学館について 情報

百科事典マイペディア 「クワイ」の意味・わかりやすい解説

クワイ

中国原産のオモダカ科の野菜。各地の水田に栽培される。球茎はやや青みを帯び,球形で,先端から,葉と,地下性の匍匐(ほふく)枝をのばし,枝の先端に扁球形で頂にくちばし形の芽のある塊茎をつける。これを煮たり,きんとんなどにして食用とするが,苦みがある。なお中国料理に用いられるクログワイ(オオクログワイ)は,カヤツリグサ科の植物。
→関連項目オモダカ

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栄養・生化学辞典 「クワイ」の解説

クワイ

 [Sagittaria trifolia var. sinensis],[S. sagittifolia].オモダカ目オモダカ科オモダカ属の水生多年草.塊茎を食べる.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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