クロム酸(読み)クロムサン(英語表記)chromic acid

デジタル大辞泉 「クロム酸」の意味・読み・例文・類語

クロム‐さん【クロム酸】

クロム酸塩を生じる酸。水溶液中でのみ知られ、酸化クロム(Ⅵ)が水に溶けてできる。低濃度で黄色、高濃度になると赤から赤黒色になる。また俗に、酸化クロム(Ⅵ)をいう。

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精選版 日本国語大辞典 「クロム酸」の意味・読み・例文・類語

クロム‐さん【クロム酸】

〘名〙
① 酸化クロム(VI)の水溶液。化学式 H2CrO4 濃度が増すに従って、黄赤色、赤色、赤黒色となる。クロム酸塩を生成する酸。
② 酸化クロム(VI) CrO3 の俗称。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロム酸」の意味・わかりやすい解説

クロム酸
くろむさん
chromic acid

クロム(Ⅵ)のオキソ酸H2CrO4であるが、この酸自体は単離されていない。酸化クロム(Ⅵ)CrO3の水溶液がクロム酸溶液であるため、酸化クロム(Ⅵ)がクロム酸といわれたこともあった。

  CrO3+H2O→H2CrO4
 低濃度のクロム酸溶液は黄赤色であるが、濃度が高くなるにしたがって赤色ないし濃赤色を呈し、黒ずんだ色となる。溶液中にはCrO42-、HCrO4-、Cr2O72-などのイオンが存在し、高濃度になるとポリ酸イオンCr3O102-、Cr4O132-を生ずる。クロム酸イオンは塩基性では安定であるが、酸性になると可逆的に二クロム酸イオンCr2O72-に変化する。

  2CrO42-+2H+Cr2O72-+H2O
[岩本振武]

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改訂新版 世界大百科事典 「クロム酸」の意味・わかりやすい解説

クロム酸 (クロムさん)
chromic acid

クロム酸塩MI2CrO4を生成する酸H2CrO4名称遊離状態ではとり出されていないが,酸化クロム(Ⅵ)CrO3の水溶液をこのように呼ぶことが多い。転じてCrO3そのものをクロム酸ということもあるが,誤称である。酸化クロム(Ⅵ)水溶液がきわめて濃度の低いときは,クロム酸塩水溶液に似た黄赤色で,

 CrO3+H2O⇄2H⁺+CrO42

に近い状態であると考えられるが,濃度が高くなるにつれて赤色となり,HCrO4⁻,二クロム酸イオンCr2O72⁻などが含まれてくるようになり,さらに高濃度になって赤黒色となると,三クロム酸イオン[Cr3O102⁻,四クロム酸イオン[Cr4O132⁻などのポリクロム酸イオンが含まれてくる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クロム酸」の意味・わかりやすい解説

クロム酸
クロムさん
chromic acid

化学式は H2CrO4 と書けるが,遊離の形で結晶としては得られていない。三酸化クロム CrO3 の水溶液をクロム酸ということが多い。

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世界大百科事典(旧版)内のクロム酸の言及

【酸化クロム】より


[酸化クロム(III)]
 化学式Cr2O3。二クロム酸アンモニウム(NH4)2Cr2O7を熱分解させるか,二クロム酸塩を硫黄などと熱して還元してつくられる。 (NH4)2Cr2O7―→Cr2O3+N2+4H2Oまた水酸化クロム(III)を熱しても得られる。…

【二クロム酸】より

…化学式H2Cr2O7。重クロム酸bichromic acidともいうが,これは誤称である。遊離の状態では得られず,酸化クロム(VI) CrO3の水溶液中でクロム酸H2CrO4と平衡を保っていることが知られている。…

※「クロム酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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