クロゴケグモ(英語表記)black widow
Latrodectus mactans

改訂新版 世界大百科事典 「クロゴケグモ」の意味・わかりやすい解説

クロゴケグモ
black widow
Latrodectus mactans

ヒメグモ科のクモ。世界一毒性の強い毒グモとして知られている。カナダ南部,アメリカ,中央アメリカ,キューバに分布し日本にはいない。体長は雌18~28mm,雄5~8mm。頭胸部,腹部ともに黒色で,雌は腹部背面後端と下面に赤色斑を,雄は腹部背面中央と,そこから両側に向かって数本の赤色または白色の横条がある。屋内性のクモで,暗い涼しい場所を好み,地下室,物置小屋,トイレ,廃屋などに生息し不規則な網を張る。毒グモとしてはオーストラリアのシドニージョウゴグモとともに世界的に有名である。毒は神経毒で,かまれると,発汗,吐きけ,めまい,動悸などの症状を呈し,ときには筋肉の痙攣(けいれん),麻痺を起こす。体力の弱い人,子ども,老人などでは死亡する場合もあるが,死亡報告も4年に1~2名程度で,ヘビの被害に比べるときわめて少ない。ゴケグモ属のクモはこのほかに,セアカゴケグモ,ハイイロゴケグモなどが世界の熱帯地域に広く分布している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クロゴケグモ」の意味・わかりやすい解説

クロゴケグモ
Latrodectus mactans; black widow spider

クモ綱クモ目ヒメグモ科。体長は雌1~1.5cm,雄 0.2~0.4cm。雌は光沢のある黒色で,腹部下面に砂時計型の赤色紋をもつ。屋内外を問わず薄暗いところに不規則網をつくる。毒性の強さでは世界的に有名。アメリカの熱帯および温帯地域に広く分布する。最近の研究では,いわゆるクロゴケグモといわれるクモには数種が混っており,アメリカ合衆国の東側と西側では種が違うことがわかってきた。 L. hesperusおよび L. variolusという学名が使用され,真の L. mactans何者か不明であるという。いずれにしてもゴケグモ属 Latrodectusの種はどれも毒性がある。クロゴケグモが日本にも貨物について入ったことがあるが,定着は確認されていない。日本にも定着したセアカゴケグモはオーストラリア原産である。 (→クモ類 )

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世界大百科事典(旧版)内のクロゴケグモの言及

【毒グモ(毒蜘蛛)】より

…毒の成分は定かではない。もっとも有名なものは,北アメリカ~中央アメリカに分布しているクロゴケグモと,オーストラリアのシドニー周辺に分布しているシドニージョウゴグモAtrax robustusである。この2種は人や家畜に対しての刺咬(しこう)症例も多く,10例以上の死亡例を含めた多数の被害が報告されている。…

※「クロゴケグモ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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