クロコダイル(英語表記)crocodile

翻訳|crocodile

精選版 日本国語大辞典 「クロコダイル」の意味・読み・例文・類語

クロコダイル

〘名〙 (crocodile) クロコダイル科クロコダイル属に属するワニの総称。現生ワニ類のうち最も多く栄えている類で、十数種知られる。代表的なワニなので、単にワニ属ともいわれる。口を閉じたとき、下あごの第四歯があごの側方に突き出るのが特徴。上から見ると頭部は三角形のものが多いので、口吻(こうふん)の先が幅広いアリゲーターと区別できる。性質は一般に他のワニより荒く、ナイルワニイリエワニなどは水辺に近づく動物や人を襲う。ほかアメリカワニ、シャムワニ、ヌマワニなどがいる。
※造化妙々奇談(1879‐80)〈宮崎柳条〉二編「鰐魚(ガクギョ)(〈注〉コロコダイル)は半ば水に居し半ば陸に居す」

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デジタル大辞泉 「クロコダイル」の意味・読み・例文・類語

クロコダイル(crocodile)

ワニ目クロコダイル科の爬虫類はちゅうるいの総称。口を閉じても下あごの大きな第4歯が見える。熱帯にすみ、水辺に近づいた動物を襲う。ナイルワニ・イリエワニなど。
[類語]わにガビアルアリゲーターカイマン

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改訂新版 世界大百科事典 「クロコダイル」の意味・わかりやすい解説

クロコダイル
crocodile

性質の荒い大型種を含む爬虫綱クロコダイル科Crocodylidaeに属するワニ類の総称。アフリカ中南部,インド,熱帯アジア,ニューギニア,オーストラリア北部および熱帯アメリカの湖沼や河川の淡水に分布し,一部の種は海水中でも生活できメラネシア諸島に及んでいる。5属が含まれる。西アフリカ産の原始的なワニとされるコビトワニOsteolaemus tetraspisは,全長2m足らずの小型でおとなしいが,それ以外はすべて大型で性質が荒い。東南アジア産のガビアルモドキマライガビアルTomistoma schlegeliiは最大5m。クロコダイル類ではもっとも吻(ふん)部が長く,その長さは基部の幅の3~4.5倍もあって歯の数も多い。インド・パキスタン産のガビアルGavialis gangeticusは,1属1種の特異なワニで,全長4~6m。ワニ類ではもっとも吻部が長い。アフリカ中部産のアフリカクチナガワニMecistops cataphractusとともにガビアル亜科Gavialinaeに含まれる。クロコダイル属Crocodylusは10種を含むワニ類中最大のグループで,大型種はすべて本属に入る。すなわち,全長の最大が7mに達するものに,熱帯アジアからオーストラリア北部に分布するイリエワニC.porosus,熱帯アメリカに分布するアメリカワニC.acutus,オリノコワニC.intermediusおよびアフリカ・マダガスカル産のナイルワニC.niloticusがあり,次いでヌマワニC.palustrisの5mで,他は3m前後である。これら大型種の中でもとくに人に危険な種はイリエワニとナイルワニくらいで,後者も地方によっては安全とされる。

 クロコダイルの一日は日光浴から始まる。夜間は水中にとどまり,日の出とともに水から出て堤に横たわり日光浴を行う。体温が上昇すると日陰か水中に移り,極端な体温の変化を避ける。夜は岸辺近くの浅い水中に潜み,眼と吻端のほか鼻孔のみ水面から出して,水飲場にやってくるアンテロープなどの獲物を待ち受ける。強力なあごと鋭い歯で獲物にかみついた後,四肢をふんばって獲物を水中に引きずりこみ窒息させる。大きな獲物は口でくわえたまま,体を回転させる“ワニのツイスト”によってねじり切って食べる。子ワニは最初の間カエル,カニ,水生昆虫などを食べるが,成長とともに魚,小動物に移っていく。雌は繁殖期になると,水辺に泥や枯枝などを集めて塚状の巣をつくり,その中に産卵してこれを守る。ナイルワニのように孵化(ふか)後数ヵ月間も子ワニのめんどうを見るものもある。クロコダイル類は腹部の肋骨の発達が悪いためなめしやすく,良質の皮革材料とされて大量に用いられてきた。そのためクロコダイルの各種とも生息数が著しく減少し,現在ではすべてが保護の対象となっている。
ワニ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロコダイル」の意味・わかりやすい解説

クロコダイル
くろこだいる
crocodile

爬虫(はちゅう)綱ワニ目クロコダイル科に属するワニの総称。この科Crocodylidaeは、性質の荒い大形種を含む。北部を除くアフリカ、熱帯アジア、ニューギニア島、オーストラリア北部およびアメリカの亜熱帯、熱帯の湖沼や河川の淡水に分布し、一部は海に泳ぎ出てメラネシアに及んでいる。クロコダイルは歯並びの相違でアリゲーター科と分けられるが、両者に例外もみられ、腹面の各鱗板(りんばん)の後部に、濾胞(ろほう)という小さなくぼみがあるのが最大の特徴である。一般に吻部(ふんぶ)が細長くて先端がとがるが、ヌマワニCrocodylus palustrisやコビトワニOsteolaemus tetraspisでは吻部が短く幅広い。全長4~5メートルの大形種が多く、とくにフロリダ半島南部から熱帯アメリカに分布するアメリカワニC. acutus、熱帯アジアからオセアニアに分布するイリエワニC. porosus、北部を除くアフリカ全域、マダガスカル島に分布するナイルワニC. niloticusは最大6~7メートルに達する。他方、西アフリカ産のコビトワニは全長が最大でも2メートル足らずで、性質もおとなしい。クロコダイル科は下あごの関節骨形状の違いから、吻部のきわめて長いガビアル亜科3属3種と、そのほかの2属13種を含むクロコダイル亜科とに分けられ、前者にはかつて別科に分けられていたガビアル属Gavialisも含まれる。夜行性で、性質の荒い種が多いが、人にとってとくに危険なのはイリエワニとナイルワニで、後者は地域によってはそれほど危険視されていない。餌(えさ)はスイギュウやカモシカなどの哺乳類(ほにゅうるい)、魚類、両生類などである。雌が川岸の砂地に巣穴を掘って産卵し、産卵後は卵を守るものが多い。

[松井孝爾]


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百科事典マイペディア 「クロコダイル」の意味・わかりやすい解説

クロコダイル

クロコダイル科に属するワニ類の総称。吻(ふん)は細長く,上下の顎の歯は互いにかみ合っており,口を閉じても上下の歯が外側から見える。イリエワニナイルワニなど大型で性質の荒いものが多い。東南アジア〜オーストラリア北部,アフリカ,熱帯アメリカに分布。→アリゲーター
→関連項目カイマンワニ(鰐)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クロコダイル」の意味・わかりやすい解説

クロコダイル
crocodile

ワニの呼び名の一つで,クロコダイル科のクロコダイル属 Crocodylus,コビトワニ属 Osteolaemus,カビアルモドキ属 Tomistomaの3属に含まれる 13種がその名で呼ばれる。獰猛な種類が多く,特にイリエワニナイルワニは「人食いワニ」として有名である。吻の形はさまざまで,ガビアルを思わせる細長いものまである。

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世界大百科事典(旧版)内のクロコダイルの言及

【ワニ(鰐)】より

…ワニ目Crocodiliaに属する水陸両生の大型爬虫類の総称。世界の熱帯,亜熱帯に分布し,少数が温帯地方にも及んでいる。2科9属23種に分けられる。
[形態]
 ワニ類は水中生活に適応した形態をしており,体は細長くやや扁平で,尾部は長く強大で側扁する。頭部は大きく吻部(ふんぶ)は長く扁平で,隆起した吻端上面には1対の外鼻孔が開口する。眼は大きくて突出し,体を水中に沈めたときには,外鼻孔,眼,耳孔だけが水面上に出る。…

【ワニ(鰐)】より


[系統,分類]
 ワニの祖先型は三畳紀後期の槽歯類から分化し,中生代に繁栄して海洋性を含む多くの大型種が出現した。現生種の分類には諸説があるが,内鼻孔,歯列,鱗板などの構造の相違によって,アリゲーター科Alligatoridaeとクロコダイル科Crocodylidaeの2科に分類されることが多い。アリゲーター科には,ヨウスコウワニ,ミシシッピワニ,メガネカイマン(イラスト),クロカイマンなどが,クロコダイル科にはイリエワニ,ナイルワニ,ガビアル(イラスト),ヌマワニ,アメリカワニなどが含まれる。…

※「クロコダイル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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