クリーム(英語表記)cream

翻訳|cream

精選版 日本国語大辞典 「クリーム」の意味・読み・例文・類語

クリーム

〘名〙 (cream)
① 菓子などを作るのに用いる、やわらかい、白色の脂肪。元来は牛乳からとったもの(生クリーム・乳脂)をいうが、他の安価な脂肪を材料としたショートニングなどの代用品もしばしば用いられる。
虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一二「夏は氷盤に苺を盛って、旨(あま)き血を、クリームの白きなかに溶(とか)し込む」
② 卵、牛乳、小麦粉、砂糖などを混ぜて作る食品。菓子を作るのに用いる。バタークリームカスタードクリームなど。
③ 牛乳と小麦粉を主材料とした、ホワイトソースに近いスープ。「クリームシチュー
④ 人の皮膚などに塗る、蝋・脂肪などと水を混ぜて乳化させたものを基剤にした白い粘体。
(イ) 皮膚や髪の手入れに用いる化粧品。コールドクリームクレンジングクリーム、栄養クリーム、ハンドクリームヘアクリームなど。
※都新聞‐明治四〇年(1907)八月八日「猶同店には化粧室の設けあり、〈略〉クリーム、化粧水、香水など充がひ」
(ロ) 皮膚に塗ったりすりこんだりする家庭用医薬品。かゆみどめクリームなど。
⑤ くつずみ。くつクリーム。
※ア・マリア(1923)〈谷崎潤一郎〉二「クリームを塗り換へた踵の高い女の白靴」
※ゴッホの手紙(1951‐52)〈小林秀雄〉「被(おほ)ひの散らし模様は、ディアズかモンティセリ風の鳶色、赤に、薔薇に、白に、クリームに、黒に」
⑦ 「アイスクリーム」の略。

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デジタル大辞泉 「クリーム」の意味・読み・例文・類語

クリーム(cream)

牛乳からとれる黄白色のどろっとした脂肪質。成分は乳脂肪・水分・たんぱく質乳糖などで、乳脂肪分18.0パーセント以上のもの。バター・菓子の製造や料理・コーヒーなどに用いる。乳脂。生クリーム。クレーム
カスタードクリームのこと。
凝乳状の基礎化粧料。油性と水性の2タイプがある。皮膚の保護、髪の手入れなどに用いる。「ヘアクリーム
靴墨のこと。靴クリーム
クリーム色」の略。
アイスクリーム」の略。

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改訂新版 世界大百科事典 「クリーム」の意味・わかりやすい解説

クリーム
cream

牛乳からとった食用のクリームと化粧品のクリームがある。語源は,キリスト教で洗礼の儀式に使う聖油や聖膏を意味するラテン語chrismaにちなむ。

牛乳の脂肪は微細な脂肪球の形で分散している。この脂肪分を集めた黄白色の液体がクリームである。脂肪は比重が軽いので牛乳を静置しておいても浮上し,クリーム層ができる。しかし静置法は時間がかかり,脂肪の分離も不完全なので,現在は遠心力を利用したクリームセパレーター(クリーム分離機)が用いられている。クリームはバター,アイスクリーム,洋菓子の原料になるほか,コーヒーや料理に用いられる。規格上は乳脂肪18.0%以上と定められていて,以下のような各種のクリームが製造されている。なお市販のクリームはすべて殺菌処理がなされており,生クリームというのは俗称である。(1)コーヒークリーム 乳脂肪分18~20%の製品で,テーブルクリームともいわれる。コーヒーや料理用である。(2)ホイップクリーム 乳脂肪分40~45%の高脂肪製品である。ホイップ(泡立て)用で,洋菓子の製造に用いられる。(3)サワークリーム 乳脂肪分約20%のクリームを乳酸菌により発酵させた製品である。ホイップしたクリームのような性状で,やや酸味があり,ロシア料理で多く使われる。(4)クリームパウダー クリームを噴霧乾燥して粉末状とした製品で,規格上は乳固形分95.0%以上(うち乳脂肪分50.0%以上),水分5.0%以下となっている。これらの各クリーム製品と外観,性状が類似のもので,乳脂肪の一部または全部を植物性脂肪で置換した製品が市販されている。
執筆者:

ホイップしたクリームには,砂糖を加えて甘くしたクレームシャンティイーと,甘みをつけないクレームフェッテがあり,後者はババロアやパフェに用いられる。クレームシャンティイーは,でき上がり1カップとして生クリーム180mlを乾いたボールに入れ,ボールごと氷で冷やしながら泡立て,かるく泡立ったところでふるいを通した砂糖40~60gを入れ,さらにクリームの先が立つくらいまで泡立ててから用いる。なお,カスタードクリームは牛乳,鶏卵,砂糖,小麦粉などを合わせたもので,シュークリームやクリームパンに用いる。
執筆者:

油性成分と水性成分を混ぜて乳化させたもの。人間の皮膚は通常皮脂腺から皮脂が,汗腺から汗が分泌され,皮膚表面で乳化して皮脂膜をつくり保護しているが,角質老廃物やほこりなどといっしょになった汚れた皮脂膜は洗顔で落としてしまうので,一時的に皮脂膜の代りに肌を保護するためと,寒気や風,健康状態などによって皮脂膜のできにくいとき,肌荒れを防ぎ肌にうるおいを与えるために用いる。一般的にはコールドクリームcold creamタイプと,バニシングクリームvanishing creamタイプとに分けられ,前者は油成分を水成分中に微細に分散乳化したものでo/w型(油性クリーム)と呼び,後者は逆に水成分を油成分中に分散乳化したものでw/o型(中油性・弱油性クリーム)と呼ぶ。コールドクリームはローマ皇帝マルクス・アウレリウスの侍医として有名だったガレノスの創製したガレノス蠟膏がもとといわれている。これはステアリン酸などの油成分に,蜜蠟とホウ(硼)砂によってできる乳化剤を使ったもので,化粧品としてつくられるようになったのは18世紀に入ってからである。肌につけた感じからコールド(つめたい)と名付けられたという。化粧クリームとして代表的なもので,クレンジングクリーム,マッサージクリーム,栄養クリームなどがあり,それぞれ用途によって成分を加減してある。バニシングクリームは20世紀に入ってからつくられたもので,ステアリン酸とカリセッケンを乳化剤としたクリームで,肌につけてこすると最初白くなるが,引き続きこすっていると白さが消える。つまり消える(vanish)というところから名付けられた。日本にクリームが入ってきたのは1886年ごろからである。それまではクリームの代りに,米ぬかを布袋に入れたぬか袋が使われていた。1909年以降,国産のクリームが量産されるようになり,需要も種類もふえていった。第2次大戦後は乳化剤の発達によりw/o/w型のような多相エマルジョンや油成分の少ない乳液,顔料成分を配合したファンデーション類など,安定性の高いものがつくられるようになった。
化粧品
執筆者:


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クリーム」の意味・わかりやすい解説

クリーム
cream

牛乳から分離させた乳脂肪をいう。牛乳中の脂肪は他の乳成分より軽いので容器に入れて静置しておくと次第に浮上して黄白色の層が分離してくる。この部分がクリームであるが,今日ではクリームセパレーターにより遠心力で分離し,バター,アイスクリームなどの原料,あるいは市販クリームとして料理,製菓に用いる。酸度 0.2%以下,乳脂肪 18.0%以上のものがクリームと規格づけられているが,使用目的によりその脂肪含量が異なる。市販クリームとしてはホイップクリーム,コーヒークリーム,プラスチッククリーム,サワークリームなどの種類がある。ホイップクリームは比較的脂肪含量の高いもので,一定の条件下で攪拌することにより微細な気泡をクリーム中に吹込み,泡立ったままの状態で安定化させてある。調理用,喫茶用,製菓用として需要が多い。コーヒークリームはテーブルクリームとも呼ばれ,脂肪含量 20~30%のもので,コーヒーに入れた場合,フェザリングと呼ばれるカードを生成し,コーヒーの風味をまろやかにする。プラスチッククリームは脂肪 80~90%の含有量の高いもので,冷却によって固形状になるのでこの名がつけられている。おもに製菓用。サワークリームは純乳脂肪の生クリームに乳酸菌を加えて発酵させたもので,酸味があるのが特徴で,スープや煮込み料理などおもに調理用である。

クリーム
cream

化粧品の一種。形状は脂肪油,油ろう,水,乳化剤を混合した固形状の乳化物である。配合する原料により,油性,無油性,およびその中間性のものに分類できる。またその用途によって,(1) 肌や毛髪を保護し潤いを与える栄養クリーム ルブリケーティングクリーム,バニシングクリーム,ヘアクリーム,ハンドクリーム,(2) メーク・アップ用のなめらかな土台をつくる化粧用クリーム ファンデーションクリーム,(3) 肌のよごれを落す衛生洗浄クリーム クレンジングクリームコールドクリームなどがある。しかし多くのクリームはこれらの3つの機能が重なり合って作用しており,単独に機能するものは少い。このほかに特別な目的に使用するものとして漂白クリーム,日焼けどめクリーム,ニキビ・吹出物用クリーム,男性用シェービングクリームなどがある。

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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「クリーム」の解説

クリーム【cream】

①牛乳のなかの脂肪分を分離した、乳白色で濃度のある液体。◇「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」という厚生省(現厚生労働省)の省令では、乳脂肪分18%以上のものとしている。
②洋菓子やパンに用いられる、とろっとした甘みのある食品。①に砂糖を加えて泡立てたもののほか、カスタードクリームバタークリームなどがある。
◆①や①を泡立てたものは「生クリーム」ともいう。
③「アイスクリーム」の略。「クリームソーダ」「クリームあんみつ」など、複合語の形で用いることが多い。

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栄養・生化学辞典 「クリーム」の解説

クリーム

 牛乳を静置すると浮上してくる成分で,脂肪に富む画分.バターの製造その他,種々の目的に利用される.

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色名がわかる辞典 「クリーム」の解説

クリーム【cream】

クリームイエロー

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世界大百科事典(旧版)内のクリームの言及

【乳】より

…習慣づけられたのか,自発的に縦列に並ぶヤギの例もトルコにある。 乳の加工技術は一見,道具やいくつかの手法の組合せで,多様にみえるが,基本的には,(1)乳酸発酵させて,凝乳化させる酸凝乳技術系,(2)子の第四胃からとった凝固剤を入れて,凝乳化させる酵素凝乳技術系,(3)放置して浮上したクリームを分離し,のちに攪拌(かくはん)してバターを分離するクリーム分離技術系とに分けられる。(1)はヨーグルト,(2)はチーズ,(3)はクリームによって代表される。…

【ロック】より

…(2)ブルース・ロックblues rock 1960年代なかば,イギリス,アメリカ両方で,本来は黒人音楽だったブルースを,好んで演奏する白人ギタリストが人気を集めた。イギリスのエリック・クラプトンEric Clapton(1945‐ )がその好例で,彼を中心にした3人組クリームThe Creamは,わずか2年の活動ののち68年に解散したが,イギリスのロック史に不滅の足跡を残した。同じころアメリカで人気の高かったブルース・ロックのバンドに,ポール・バタフィールド・ブルース・バンドThe Paul Butterfield Blues Bandがあった。…

※「クリーム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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