クリーク(Ernst Krieck)(読み)くりーく(英語表記)Ernst Krieck

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

クリーク(Ernst Krieck)
くりーく
Ernst Krieck
(1882―1947)

ドイツの教育学者。フェーギスハイムに生まれる。カールスルーエ師範学校卒業(1900)ののち、マンハイムの小学校教師をしながら社会史、文化史、教育史の研究を続けた。フランクフルトアムマインの教育大学教授(1928)を経て、ハイデルベルク大学総長となった(1933)。ヘルバルト以来の従来の教育学を個人主義的、規範的、技術的教育学であると批判し、それに対して現実的、客観的事象としての教育事実の叙述、認識を目的とする教育科学Erziehungswissenschaftの樹立を唱えた。彼によれば、教育とは、他の社会機能と密接な連関をもつ社会の根源的機能であり、社会が生活秩序、価値などの文化を通してその成員を類型同化する過程であるとされた。しかも、社会の包括的、本源的母体を民族国家と考え、これを諸機能の統一原理とすることにより、その教育科学は民族主義的、国家主義的性格を濃厚にした。

 主著『教育の哲学』(1922)、『文化民族の教育組織』(1927)などにおける教育理念や、『自由ドイツ学校』誌上での中央党社民党への攻撃は、ナチス政府の迎えるところとなり、その理論的イデオローグの役を果たすこととなった。

[舟山俊明]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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