クリップスプリンガー(英語表記)klipspringer
Oreotragus oreotragus

改訂新版 世界大百科事典 「クリップスプリンガー」の意味・わかりやすい解説

クリップスプリンガー
klipspringer
Oreotragus oreotragus

偶蹄目ウシ科の哺乳類。岩場にすみ,ひづめの先端で歩く小型のアンテロープ。サハラ以南のアフリカに分布。体長75~115cm,尾長7~25cm,体高45~60cm,体重10~18kg。角はふつう雄にだけあり,長さ15cm前後でまっすぐかわずかに前に曲がる。背が丸く,頭と尾が短く,四肢ががんじょうで,第3,4指のひづめの先端だけを地に着けて険しい岩場を自在に歩き,信じがたいほど高く跳躍できる。耳介は大きく,その前面は白く約3本の放射状に走る黒線がある。毛は厚く,体背面は霜降り状の灰黄褐色,下面はほとんど白色低地から標高4000mまでの半砂漠,サバンナ疎林などの,近くに茂みがある岩場に1対,または1雄と2雌および子からなる家族群ですむ。朝と夕方および月夜に出歩き草や木の葉を食べる。日中は雄が高い岩の頂上にじっと立って見張り,危険を感ずると鋭い鳴声を発して茂みに隠れる。おもな天敵はヒョウ,カラカル,ワシ。年2回各1子を生む。妊娠期間約7ヵ月,1年で性的に成熟する。寿命は飼育下で15年。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クリップスプリンガー」の意味・わかりやすい解説

クリップスプリンガー
くりっぷすぷりんがー
klipspringer
[学] Oreotragus oreotragus

哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目ウシ科の動物。イワトビレイヨウともいう。アフリカの東部から南部に分布し、茂みの多い岩石地帯や山岳地帯に生息する。肩高50~60センチメートル、体重18キログラム。角(つの)は雄だけにあり、長さ16センチメートルほどでスパイク状。体は黄褐色で腹面は白い。ひづめは岩場を歩くのに適し、その接地面は幅2.5センチメートルぐらいである。普通は単独、ときに2~8頭の小群で暮らし、岩の間の木の葉や草を食べるが、イネ科の草はほとんど食べない。ジャンプ力が驚くほど強く、高さ7.2メートルも跳びはね、9メートルも崖(がけ)を飛び降りたりする。妊娠期間約214日で、出産は雨期かその直前が多いが、ほぼ一年中みられる。

[今泉忠明]


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世界大百科事典(旧版)内のクリップスプリンガーの言及

【レイヨウ(羚羊)】より

…体は灰褐色,赤褐色,オリーブ色などで,すべてアフリカ産。ごく小さくほぼウサギ大のローヤルアンテロープNeotragus pygmaeus,眼下腺の麝香臭がきわめて強いジャコウアンテロープ(スニ)N.moschatus,やぶにすみ木の葉を主食とするキルクディクディクMadoqua kirkii,岩場にすみ6mも跳びはねるクリップスプリンガーOreotragus oreotragus,なわばりに強い執着を示すオリビOurebia ourebi,行動圏の各所に糞で目印をつけるといわれるスタインボックRaphicerus campestris,荒れた岩山にすみ,一つの丘に一つの群れしか見られないといわれるベイラDorcatragus megalotisなど6属13種がある。 なお,レイヨウ類のうち,とくに姿の美しい砂漠にすむガゼル類約15種を除いた残りだけをアンテロープと呼ぶことがある。…

【レイヨウ(羚羊)】より

…体は灰褐色,赤褐色,オリーブ色などで,すべてアフリカ産。ごく小さくほぼウサギ大のローヤルアンテロープNeotragus pygmaeus,眼下腺の麝香臭がきわめて強いジャコウアンテロープ(スニ)N.moschatus,やぶにすみ木の葉を主食とするキルクディクディクMadoqua kirkii,岩場にすみ6mも跳びはねるクリップスプリンガーOreotragus oreotragus,なわばりに強い執着を示すオリビOurebia ourebi,行動圏の各所に糞で目印をつけるといわれるスタインボックRaphicerus campestris,荒れた岩山にすみ,一つの丘に一つの群れしか見られないといわれるベイラDorcatragus megalotisなど6属13種がある。 なお,レイヨウ類のうち,とくに姿の美しい砂漠にすむガゼル類約15種を除いた残りだけをアンテロープと呼ぶことがある。…

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