クラムスコイ(読み)くらむすこい(英語表記)Иван Николаевич Крамской/Ivan Nikolaevich Kramskoy

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラムスコイ」の意味・わかりやすい解説

クラムスコイ
くらむすこい
Иван Николаевич Крамской/Ivan Nikolaevich Kramskoy
(1837―1887)

19世紀ロシア美術を代表する画家の一人。貧しい町人階級の出で、若いころは写真師のもとで修正の仕事なども手がけ、のちペテルブルグの美術アカデミーに学んだ。しかし、当時のアカデミズムに反発して、移動展に積極的に参加し、肖像画の分野でも優れた仕事を残した。『荒野キリスト』(1871・トレチャコフ美術館)は苦悩するキリストの姿を全的に表現して、ロシア宗教美術の傑作の一つとなった。また、文豪トルストイ親交を結び、その肖像画(1871)も有名である。このほか、ネクラーソフ、サルティコフ・シチェドリンシーシキンなども描いている。晩年は明るく色彩豊かになり、その代表作として『見知らぬ女』(1883)がある。彼の肖像画ではその目の表情に独特のものが認められる。

木村 浩]

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改訂新版 世界大百科事典 「クラムスコイ」の意味・わかりやすい解説

クラムスコイ
Ivan Nikolaevich Kramskoi
生没年:1837-87

ロシアの画家。オストロゴジスク市に生まれる。移動展派の設立者の一人。宗教,哲学,詩に題材を借り,また社会の不正に悩む19世紀後半のロシア人を描く。壮大な構図と写実的な表現による大作《荒野のキリスト》(1871)や,《L.N.トルストイ》《N.A.ネクラーソフ》の肖像画は秀作。1870年代に描かれた農民をテーマとする一連の肖像画は,内面的な輝きをみせる。レーピンに大きな影響を与えた。
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百科事典マイペディア 「クラムスコイ」の意味・わかりやすい解説

クラムスコイ

ロシアの画家。オストロゴジスク生れ。1864年ペテルブルグのアカデミーを退学し,反アカデミズムを唱えて1871年〈移動展派Peredvizhniki〉を組織。リアルな描写とモニュメンタルな構図を融合し,《荒野のキリスト》(1872年,モスクワ,トレチヤコフ美術館蔵),《L.N.トルストイの肖像》(1876年,同美術館蔵)などを制作。
→関連項目トレチヤコフ美術館レビタン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クラムスコイ」の意味・わかりやすい解説

クラムスコイ
Kramskoi, Ivan Nikolaevich

[生]1837. オストロゴージスク
[没]1887
ロシアの肖像画の巨匠。イリヤ・E.レーピンの師。貧しい一般家庭に生まれる。サンクトペテルブルグ美術アカデミーに学んだが,そのアカデミズムに抗し卒業制作を拒否して退学。移動展派を結成してリアリズムを主張した。主要作品『荒野のキリスト』(1872),『レフ・トルストイの肖像』(1873),『森番』(1874),ロシアのモナリザと呼ばれる『見知らぬ女(忘れえぬ女)』(1883)など。いずれもトレチヤコフ国立美術館に収蔵されている。(→ロシア美術

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