日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
クライン(Oskar Klein)
くらいん
Oskar Klein
(1894―1977)
スウェーデンの物理学者。ストックホルム生まれ。1910年ころからストックホルムのノーベル研究所、アレニウスのもとで学ぶ。第一次世界大戦で兵役についた後、コペンハーゲンでボーアに学ぶ。1921年にストックホルム大学で博士号を取得し、1930年から1962年までストックホルム大学の教授を務めた。同大学ではクラインの名を冠した記念講座が毎年開かれている。ノーベル賞の選考委員を長く務めた。量子論の分野に数多くの貢献がある。ゴルドンWalter Goldon(1893―1939)とともに定式化した、スピン0の相対論的な自由粒子を表す場が満たす「クライン‐ゴルドン方程式」、仁科芳雄(にしなよしお)とともに導いた、自由電子に対するコンプトン散乱による電磁波の散乱断面積に関する「クライン‐仁科の式」、負の運動エネルギーをもつ電子に関するパラドックスで、のちにディラックの空孔理論に発展した「クラインのパラドックス」、カルツァTheodor Kaluza(1885―1954)が提唱し、クラインが修正した、重力と電磁気力を統一するために五次元以上の時空を仮定する「カルツァ‐クライン理論」などに名を残す。
[編集部 2023年7月19日]