クマゼミ(読み)くまぜみ(英語表記)Cryptotympana facialis

改訂新版 世界大百科事典 「クマゼミ」の意味・わかりやすい解説

クマゼミ (熊蟬)
Cryptotympana facialis

半翅目セミ科の昆虫。日本最大のセミで,体はがんじょうで黒く,光沢がある。このような特徴から和名がつけられた。日本では関東地方から琉球諸島にかけて普遍的に分布する。体長45~50mm,前翅の開張120~130mm。体は黒色で光沢があり,腹背には白帯を装うものがある。前翅前縁脈は基方で黄緑色,雄の腹弁は長円形で一様に橙色である。腹背の白色部の大きさには地理的変異が見られ,太く2節にわたるもの,腹背全体の側方が白くなるものなどがあり,それぞれ別亜種リュウキュウクマゼミC.f.okinawana,ヨナクニクマゼミC.f.yonakuninaとして分けられる。おもに平地に多く,7~9月に出現し,午前中にこずえなどに止まってシャワシャワ……と鳴く。センダンホルトノキを好み,しばしば群生する。琉球諸島の石垣島と西表島には別種ヤエヤマクマゼミC.yayeyamanaが分布している。体は黒色部と褐色部だけで緑色部はなく,雄の腹弁も黒色で三角形を呈する。山間部にすみ,7~9月にミンミンゼミのような声で悠長に鳴く。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クマゼミ」の意味・わかりやすい解説

クマゼミ
くまぜみ / 熊蝉
[学] Cryptotympana facialis

昆虫綱半翅目(はんしもく)同翅亜目セミ科Cicadidaeに属する昆虫。大形で、体長40~48ミリメートル。体は太く頑丈で、全体が光沢のある黒色。はねは透明で、前翅前縁脈は黄緑色。雄の腹弁は長円形で、美しい橙(だいだい)色。腹部背面には白い帯が現れることがある。関東地方以西の平地に広く分布し、7~8月に出現し、朝、梢(こずえ)などでシャー、シャー、……とけたたましく鳴く。センダンを好み、ときにこの樹幹に群れる。

 石垣島と西表島(いりおもてじま)には別種のヤエヤマクマゼミC. yayeyamanaが分布するが、この種はクマゼミよりわずかに大きく、体長44~50ミリメートルで日本最大種である。翅脈は黒色、雄の腹弁も黒色から赤褐色で角張る。山間部に多く、午前中ミーン、ミーン、……とミンミンゼミのような声で鳴く。

[林 正美]


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知恵蔵 「クマゼミ」の解説

クマゼミ

東海地方以西で、2004年辺りから、光ファイバーケーブルを枯れ枝と間違えて産卵し、断線被害を出して話題となっているセミ。関東地方南部以西に分布する種で東京ではあまり見かけないが、西日本ではごく普通に生息する大形の種。7月から9月にかけて、街路樹や公園の木に多数が集まっていることがある。近年温暖化の影響によって分布が東日本に広がりつつあり、断線被害が関東に及ぶ可能性もある。成虫は体長6〜7cmで、アブラゼミと同じほどの大きさだが、頭部の幅が広く、翅(はね)が透明なことで区別できる。雄が鳴くのは主に午前中だけだが、夕方に鳴くこともある。鳴き声は大きく、「シャンシャンシャン」などと聞こえる。通常の産卵では、1cm近い刃物のように鋭い産卵管で木の枝の樹皮をはいで卵を埋め込む。NTT西日本では被害を防ぐために、06年からケーブルの被覆を改良するという対策を講じている。

(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2008年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クマゼミ」の意味・わかりやすい解説

クマゼミ
Cryptotympana facialis

半翅目同翅亜目セミ科。体長 40~48mm,翅端までの長さ 60~70mmの大型のセミ。体は光沢のある黒色で,黄白色の微毛におおわれるが,日数を経た個体では脱落する。腹部第3節背板両側前縁に細い白色帯がある。翅は基部が黒く,他の部分は透明で,脈は基部が黄緑色。雄の腹弁は橙黄色。成虫は7~8月に出現し,「しゃあしゃあ」と大声で鳴く。関東地方以南の本州,四国,九州,南西諸島に分布する。八重山諸島の石垣島と西表島にはヤエヤマクマゼミ C. yaeyamanaを産し,「みーん,みーん」と鳴く。

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百科事典マイペディア 「クマゼミ」の意味・わかりやすい解説

クマゼミ

半翅(はんし)目セミ科の昆虫。日本産のセミ類では最大種で体長(翅端まで)65mm内外。黒色で光沢がある。太平洋側では東京以西,日本海側では福井県以西,台湾・中国〜東南アジアに分布する。真夏に現れ,シャーシャーと鳴く。

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