クノー(英語表記)Raymond Queneau

改訂新版 世界大百科事典 「クノー」の意味・わかりやすい解説

クノー
Raymond Queneau
生没年:1903-76

フランス小説家詩人。最初シュルレアリスムの運動に加わったが,ほどなく離脱した。以後しだいに言語の問題に関心を深めて,処女小説はまむぎ》(1933)によって日常言語を書き言葉のうちに導入するとともに,数学的な世界観に支えられた独自な文学作法を確立,以後,小説《わが友ピエロ》(1942),《地下鉄のザジ》(1959),詩集《柏と犬》(1937),《運命の瞬間》(1948),一つの短いできごとを99通りの文体で書き分けた《文体練習》(1947)などの作品を発表した。庶民的な雰囲気をもつ一方で,大胆な形式的・言語的冒険を試みるクノーの作品は,新しい文学の可能性を探る先駆的な意味をもつものとして,ヌーボー・ロマンの時代にはいって高く評価されるようになった。晩年の作品には,ますます自由に想像力の羽を延ばした小説《青い花》(1965),《イカロス飛行》(1968)などがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クノー」の意味・わかりやすい解説

クノー
Queneau, Raymond

[生]1903.2.21. ルアーブル
[没]1976.10.25. パリ
フランスの小説家,詩人。パリ大学で哲学を学び,1925年頃シュルレアリスム運動に参加,グループの機関誌『シュルレアリスム革命』 (1924創刊) に協力したが,30年に脱退。小説『はまむぎ』 Le Chiendent (33) ,『きびしい冬』 Un rude hiver (39) ,『わが友ピエロ』 Pierrot mon ami (42) ,『地下鉄のザジ』 Zazie dans le métro (59) ,『青い花』 Les Fleurs bleues (65) などでは,皮肉と寛容に満ちたユーモアでさまざまな人物,ことに庶民をいきいきと描き,話し言葉を活用し造語を交えたおどけた文体はきわめて技巧的である。詩集に『樫の木と犬』 Chêne et chien (37) ,『携帯用小宇宙開闢 (かいびゃく) 論』 Petite Cosmogonie portative (50) ,『若い娘に』 Si tu t'imagines... (52) などがあり,奇想と大胆な言語実験が,純粋に古典的な伝統と結びつき,均衡を保っている。

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百科事典マイペディア 「クノー」の意味・わかりやすい解説

クノー

フランスの詩人,小説家。シュルレアリスムを経て小説《はまむぎ》で出発。《文体演習》等で言語表現の可能性を拡大ヌーボー・ロマンの先駆的小説《わが友ピエロ》(1942年)や《地下鉄のザジ》(1959年)等も書く。
→関連項目マルレリス

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