改訂新版 世界大百科事典 「クジャク(孔雀)石」の意味・わかりやすい解説
クジャク(孔雀)石 (くじゃくいし)
マラカイトmalachiteともいう。化学成分Cu2(OH)2CO3,単斜晶系に属する鉱物で,銅鉱床の上部酸化帯または二次富鉱帯に産する。装飾用,顔料,また花火の原料として使われる。大きい結晶はまれで,繊細な針状,多くは塊状または皮殻状,放射状の集合体をなす。もろい。モース硬度3.5~4,比重3.9~4.05,双晶面(100)。へき開は{201}に完全,{010}に明確。半透明ないし不透明,輝緑色,結晶はダイヤモンド光沢よりややガラス光沢に近く,集合体は絹糸光沢,ベルベット状光沢をもち,しばしば無艶または土状光沢。秋田県仙北郡荒川鉱山に多産した。
執筆者:柿谷 悟
宝石
マラカイトは,ギリシア語のmalakos(柔らかい)またはmalachē(ゼニアオイ)が語源とされる。その色は主成分の銅によるものである。特徴的な同心状縞目模様は,あたかもクジャクの羽を思わせ,和名の由来になっている。モース硬度3.5~4のため,着用宝石としては耐久性の上でやや劣るが,印章や彫刻品,置物などには高価な製品がつくられている。この緑色はマラカイトグリーンという色彩名称を生み,その粉末は古くから顔料,岩絵具として重要なものであった。主要産地は銅産出の多いコンゴ民主共和国,ザンビア,ナミビア,アメリカ,メキシコ,オーストラリアなどである。
執筆者:近山 晶
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報