クサボケ(読み)くさぼけ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クサボケ」の意味・わかりやすい解説

クサボケ
くさぼけ / 草木瓜
[学] Chaenomeles japonica Lindl.

バラ科(APG分類:バラ科)の落葉小低木。シドミノボケ、コボケ、ジナシともいう。高さ30~60センチメートル。根元からよく分枝し、短枝が変形した長さ約1センチメートルの刺(とげ)がある。若枝には初め細毛があるが、のちに抜けて小突起が出る。花木のボケにはこの突起がなく、滑らかである。葉は互生し、倒卵形で長さ2~5センチメートル、先はやや円く、基部はくさび形で縁(へり)に鈍い鋸歯(きょし)があり、両面とも無毛。雌雄同株。4~5月、径約2.5センチメートル、朱赤色の花を開く。花弁は5枚で円形萼筒(がくとう)は鐘形で、雌性花ではくびれがあり、子房は下位でよく発達している。雄しべは多数あり、花柱5本で下半部が合生する。果実球形、径約3センチメートルのなし状果で10月ころ黄色に熟す。日当りのよい山野に普通に生え、関東地方以西の本州九州に分布。よく盆栽にする。

 果実は香りがよいが、酸味が強く、塩漬け、砂糖漬け、焼酎(しょうちゅう)漬けにして食べる。果実は生薬(しょうやく)名を和木瓜(わもっか)といい、リンゴ酸2~3%、クエン酸酒石酸などを含み、果実酒(ボケ酒(しゅ))をつくり、整腸低血圧暑気あたりなどに用いる。また、利尿剤として脚気(かっけ)、その他に用いる。

[小林義雄 2019年12月13日]


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百科事典マイペディア 「クサボケ」の意味・わかりやすい解説

クサボケ

シドミとも。本州,九州の日当りのよい丘や山地にはえるバラ科の落葉小低木。ボケに似るが,たけが低く,高さ20〜50cm。枝には初め毛があるが,後に脱落し,小突起が残る。短枝はとげ状。葉は倒卵形で長さ2〜5cm。春,葉腋に3〜5個,径約2cm,朱紅色の花を開く。一部は雄花となる。果実は径3〜4cm,黄褐色に熟し,酸味が強い。

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世界大百科事典(旧版)内のクサボケの言及

【ボケ(木瓜)】より

… ボケ属Chaenomeles(英名flowering quince)は,東アジアに数種分布しており,いずれも低木で,観賞用に栽植される。クサボケC.japonica (Thunb.) Lindl.(=C.maulei (T.Moore) Schneid.)(英名dwarf Japanese quince)(イラスト)は日本に分布する落葉小低木で,地下茎状にのびた茎から分枝萌芽し,株立ちになって広がる。朱赤色の花を春につけるが,晩秋から開花を始める性質がある。…

※「クサボケ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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