クコ(読み)くこ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クコ」の意味・わかりやすい解説

クコ
くこ / 枸杞
[学] Lycium chinense Mill.

ナス科(APG分類:ナス科)の落葉小低木。高さ0.5~1.5メートル、茎は細くて淡汚白色、葉腋(ようえき)に枝の変化した刺(とげ)がある。葉は互生または短枝上に5、6枚束生し、倒披針(とうひしん)形で長さ2~6センチメートル、幅1~2センチメートル、全縁、無毛で柔らかく、葉柄は短い。8~10月、葉腋に淡紫色の花を1~3個つける。花柄は花と同じ長さで、萼(がく)は短い筒状で先が浅く5裂し、漏斗(ろうと)状の花冠は上部で5裂して径約1センチメートル、基部に濃紫色の筋(すじ)がある。雄しべは5本で花糸の基部に白毛をつけ、雌しべは1本。果実は液果で、狭楕円(きょうだえん)形、長さ1~2センチメートル。熟すと紅色となって下垂する。果肉も紅色で、中に扁平(へんぺい)な腎臓(じんぞう)形の種子が20~30個ある。アジア東部に広く分布し、日本では川の土手などにとくに多い。

 栽培はきわめて容易で、挿木でもよくつき、肥料も必要としない。徒長した春の枝は花のつきが悪いので、夏の土用に当年枝を切り、植え替え、土用芽を出させるとよく花をつける。千年枸杞と称して樹木状になっている株は、長い直根を毎年地上部に引き上げて幹のようにしつらえたものである。漢方では、果実を乾燥したものを枸杞子(くこし)と称し、滋養・強壮・強精薬、糖尿病や眼病の治療薬として用い、根を地骨皮(じこっぴ)、葉を枸杞葉(よう)と称し、解熱止瀉(ししゃ)、解毒作用があるとして果実と同様に用いる。また葉を乾燥して茶の代用としたり、若葉をひたし物として食べることもできる。

[長沢元夫 2021年6月21日]

食品

クコには、血管を和らげるルチンや、肝機能を助けるベタイン、ビタミンCが含まれる。地方によっては重要な木菜で、塩ゆでした葉を炊きたての飯に混ぜてくこ飯をつくる。枸杞酒は焼酎(しょうちゅう)にクコを漬け込んだものである。クコの生果実220グラム内外、乾燥果実の枸杞子を用いるときは40グラム内外に対し、焼酎1リットルを加え、2~3か月熟成させると、クコ特有の香りをもった枸杞酒ができる。果実とともに葉や茎を漬け込んでもよい。好みにより、漬け込みの際に砂糖を適当量加える。熟成が進んでも、中の実や葉を取り除く必要はない。市販の薬用枸杞酒には、材料にクコのほか、サフランチョウセンニンジン、ニッケイ、その他の薬草類を、さらにビタミン類、アミノ酸類を強化しているものもある。

[飯塚宗夫 2021年6月21日]


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改訂新版 世界大百科事典 「クコ」の意味・わかりやすい解説

クコ (枸杞)
box thorn
matrimony vine
Lycium chinense Miller

古来不老長寿の効ありとして薬用に用いるナス科の小低木。日本全土に分布し,川の土手などの明るいやぶに生える。またしばしば栽植される。茎は高さ1~2m,多数叢生し,よく分枝する。枝は灰褐色で細長い縦縞があり,小枝はとげに変形する。葉は数個ずつ集まってつき,長楕円形。花は8~9月に葉腋(ようえき)に1~数個つき,花冠は淡紫色。液果は楕円形で長さ1.5~2cm,熟した果皮は光沢のある赤色。日本から朝鮮・中国・台湾に分布する。葉を枸杞葉(くこよう),果実を枸杞子,根の皮を地骨皮(じこつぴ)という。いずれもベタインbetaineを含み,強壮薬として葉は枸杞茶に,果実は他の生薬と配合して高血圧,めまい,肝臓疾患,貧血,腰ひざの疼痛(とうつう)などの治療に用い,一方,地骨皮も他の生薬と配合して解熱強壮薬として,咳嗽(がいそう),吐血,多汗などの療法に応用される。果実はまた酒につけて枸杞酒として使われ,不老長寿,強精の効があるという。若葉は香りがよく,ひたしものとしたり,飯にまぜて枸杞飯とする。

 クコ属Lyciumは約100種を含み,南半球に多い。低木で枝がよく茂るので,クコをはじめいくつかの種が観賞や生垣用に栽植されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

栄養・生化学辞典 「クコ」の解説

クコ

 [Lycium chinense].ナス目ナス科クコ属の落葉低木.葉を香味野菜として食べたり,乾燥して茶にする.果実を生食したり,クコ飲料などの製造に使う.種子を煎ってコーヒーのように飲むこともある.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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